新経済モデルが「モノづくりの日本企業」を救う
生存戦略の鍵「サーキュラーエコノミー」とは

カーボンニュートラルの実現に向けて取り組みを進める企業が増えている中、近年「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」への関心が高まっている。地球環境と生態系の保護を念頭に、新しい資源の利用を抑制し、資源の循環による廃棄物ゼロを目指すこの経済システムにのっとり、欧米各国では先進企業の取り組みが加速している。今後、企業経営を大きく揺さぶる可能性が高いサーキュラーエコノミーがもたらす影響や、サーキュラーエコノミーに特化した初開催の展示会について取材した。

循環型経済は企業利益にも直結する

世界経済は大量生産・大量消費・大量廃棄の順でモノが流れる、一方通行型の「リニアエコノミー(直線型経済)」で発展を遂げてきた。ところが、この仕組みは人口増加による資源の枯渇、廃棄物による環境汚染、CO2排出量の増加による地球温暖化などを招いた。リニアエコノミーには限界があり、地球の再生能力の許容範囲を超えれば、人類を含む地球の生態系の存続は不可能だ。

こうした背景を受けて誕生した概念が「サーキュラーエコノミー」だ。新たに天然資源を採取せず、既存の製品や素材を長く使い続けることで、廃棄物の発生を最小化する経済システムを指す。サーキュラーエコノミーの具体的なビジネスモデルとしては、シェアリング、リユース、リペア、リサイクルなどが挙げられる。

 

図解:サーキュラーエコノミーとは?

これまでの経済活動で廃棄されていた製品や原材料などを「資源」と捉え、リサイクル・再利用などで資源を循環させる新しい経済モデル。「資源の抽出⇒製造⇒消費⇒リサイクル・再利用(資源の抽出)⇒製造」という循環システムにより、製造段階からリサイクルや再利用を前提とすることで廃棄物を最小限に抑え、新しい資源の利用を最小限にすることが可能となる。

サーキュラーエコノミーを牽引するのは欧州だ。2015年12月にEUが循環経済への方向性を示した行動計画を公表したことで世界的に広まったが、日本の企業経営においてはCSR活動の一環で語られることが多かった。ところが、近年は経営戦略上の重要な概念になっているという。サーキュラーエコノミーの動向に詳しい、デロイト トーマツ コンサルティングの丹羽弘善氏は、次のように説明する。

「サーキュラーエコノミーは、経営戦略として非常に重要な概念になっています。エネルギー不安定化の余波を受けて、日本が取得困難に陥ると予測される資源は少なくありません。将来的な資源の枯渇を踏まえた製造戦略こそが、サーキュラーエコノミーともいえます。簡単に言うと、外部で資源を調達せずに、自社の保有資源を活用する戦略を描くということです。サーキュラーエコノミーの概念をビジネスに取り入れて、製造→販売→回収→製造のループをつくることで、利益率の向上につながります」

サーキュラーエコノミーの社会的な意義としては、新しいモノをなるべく買わず、長く使って、新規の資源投入を抑制することだ。それは大義として存在感を発揮しているだけではなく、「ビジネスとしてどう儲けるのか」という話にも、深く関わってきているという。この流れに乗り遅れるリスクについて、丹羽氏はこう明かす。

「今後数年で、海外企業が日本企業と同等の技術水準に追いつくことが予想されます。資源の原産地が近くてモノづくりに有利な国が台頭してくることで、競争力を維持できなくなる可能性が高いです。その観点から考えると、サーキュラーエコノミーは生き残り戦略とも捉えられます。企業が持続的な成長を果たしていくためにも、サーキュラーエコノミーは今後の経営戦略において、最優先で考えるべき事項ともいえます」

 

政策も後押し。対応の遅れが成長機会の損失に

サーキュラーエコノミーへ移行が進む今、対応が遅れることで生じるリスクは無視できない。欧州ではEU手動で規制の導入により、サーキュラーエコノミーの推進に向けた計画経済的な市場が構築されつつある。また、米国ではSDGsに敏感な先進企業を筆頭に、中長期戦略として積極的にサーキュラーエコノミーを取り入れている。

この潮流を踏まえると、サーキュラーエコノミーへの対応次第で、先進国市場から締め出される可能性は否定できない。成長機会の損失につながりかねない状況を受けて、政策サイドも企業経営とサーキュラーエコノミーの融合を後押ししているという。

「これまで日本は世界的に見て、サーキュラーエコノミーの実践を推進するための目標が明確ではありませんでした。そうした中、プラスチックの使用量の削減、部品の再利用、再生利用しやすい製品の設計などに関する原則が示された『プラスチック資源循環促進法』が22年4月に施行されたのは、ターニングポイントともいえるでしょう。22年10月には経済産業省で『成長志向型の資源自律経済デザイン研究会』の第1回が行われました。サーキュラーエコノミーに関する検討会はこれまでなかったので、非常に新しい動きだといえます」(丹羽氏)

 

サーキュラーエコノミー特化の展示会で知る・体感する

サーキュラーエコノミー移行に向けた環境整備が徐々に進んでいる状況において、ビジネスへの落とし込みを考えると、材料調達や製品設計のフェーズで廃棄ゼロを考慮し、廃棄物を2次資源・材料として再生させるなど、循環のループを計画立てる必要がある。サーキュラーエコノミーへの移行をどう進めるべきか、方針を定めていない企業も少なくないはずだ。

その課題に向き合い、乗り越えるための一助になるのが、2023年3月15日から17日にかけて初開催される展示会「サーキュラー・エコノミー EXPO」だ。サーキュラーエコノミーの担い手であるプレイヤーとのマッチング機会や、産官学の有識者による200講演を用意している。

「サーキュラー・エコノミーEXPO」を企画するのは、日本有数の展示会主催会社、RX Japanの小笠原徳裕氏。再生エネルギーの展示会「スマートエネルギーWeek」に一貫して携わり、2021年からは脱炭素経営を推進する「脱炭素経営EXPO」を立ち上げた、カーボンニュートラルのエキスパートだ。

「当社は約20年前から新エネルギー分野の展示会を開催しており、スマートエネルギーWeekは世界でも有数のビジネスプラットフォームとして業界に定着しています。サーキュラー・エコノミーに着目したのは、21年に新たに立ち上げた『脱炭素経営EXPO』がきっかけです。将来的に企業がカーボンニュートラル経営を推進するうえで、脱炭素に加えてサーキュラー・エコノミーの概念が必要になるという気づきがあり、特化したEXPOを開催するに至りました。

3月の会期では、サーキュラー・エコノミーEXPOを含めた複数のEXPOで、世界30カ国から1200社が出展。来場者は5万名を見込んでいます。国内外からサーキュラー・エコノミーの実現を支援する企業が一堂に集まりますので、ぜひコミュニケーションを通じて企業の経営戦略や行動変容のヒントを得ていただきたいです」(小笠原氏)

セッションのスピーカーとして登壇予定の丹羽氏は、「まず知ることから始めてほしい」と期待を寄せる。

「サーキュラーエコノミー関連の書籍や記事も多くリリースされていますが、それを読むだけでは遠い先の未来の話に感じてしまうかもしれません。その点、展示会でサーキュラーエコノミーの先端を走っているプレイヤーの話を聞くことで、現実味を感じられると思います。すべての事業部の方に関連することなので、どの部門の方でもぜひ参加していただき、世の中で起きていることを体感する機会にしていただきたいです」(丹羽氏)

リニアエコノミーから脱却し、サーキュラーエコノミーに基づくビジネス変革が急務となっている今、先導企業の出展者との交流や、専門家の講演で網羅的に知見を得られる「サーキュラー・エコノミー EXPO」という場は、強靭な経営基盤の構築や持続的な成長を見据えるすべての企業にとって貴重な出会いと機会をもたらすはずだ。
 

サーキュラー・エコノミーEXPO公式HPはここから

 

制作:東洋経済ブランドスタジオ