アップサイクルの定義・意味とは?
リサイクルやリメイクとの違いと具体例を紹介

リサイクルやリユースなどと並ぶ言葉として「アップサイクル」を耳にしたことがある方は多いかもしれません。アップサイクルはリサイクルやリユースの類義語ですが、定義は異なるので違いは理解しておきましましょう。

本記事では、アップサイクルの定義やリサイクルをはじめとする類義語との違い、メリット・デメリットや具体事例を紹介します。アップサイクルや循環型経済に興味がある方は、ぜひ参考にしてください。

 

アップサイクルとは付加価値をつけて新しい商品を作ること

アップサイクルとは、廃棄されるはずのモノに、デザインや新しい機能などに新たな付加価値を持たせて再利用することをさします。 価値をアップグレードさせながらリサイクルする新しいリサイクルの考え方です。

アップサイクルの対義語は「ダウンサイクル」です。ダウンサイクルとは、廃棄されるモノを原料にしたり、別の素材として使ったりするなど、元のモノより価値を下げて資源を再利用する言葉です 。「カスケードリサイクル」ともいわれています。

他にも、「リデュース」「リユース」「リサイクル」「リメイク」など、アップサイクルに似た言葉があります。それぞれの意味の違いは後述します。

アップサイクルの歴史と普及の背景
アップサイクルは、1994年10月11日にレイナー・ピルツがはじめてドイツのメディアで語ったとされています 。

日本では、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動やライフスタイルを見直し、循環型社会の形成するため、2001年1月に「循環型社会形成推進基本法」が施行されました。

循環型社会形成推進基本法には、循環型社会構築のため廃棄物の減量化や、天然資源商品の消費抑制による環境負荷の低減が掲げられています 。

この循環型社会形成推進基本法の施行を受け、廃棄物処理法の改定、再生資源利用促進法の改正、建設資材リサイクル法やグリーン購入法の施行が行われ、個別の廃棄物・リサイクル関係法律の整備と相まって、循環型社会の形成に向け実効ある取り組みの推進がスタートしました。

また、2015年9月の国連サミットで採択された「2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である持続可能な開発目標」、通称「SDGs(Sustainable Development Goals)」 も、アップサイクルに関連した注目すべきポイントのひとつです。

SDGsで掲げられた17の目標のうち、12番目の「つくる責任、つかう責任」では、資源の効率的な使用が目標として掲げられています。 食品ロスの削減や廃棄物の削減が具体的な達成目標とされているため、3R(リデュース、リユース、リサイクル) とともに、目標達成手段のひとつとして注目を浴びているのがアップサイクルです。
 

アップサイクルとリサイクル・リメイクなどの類義語との違いは?

続いて、アップサイクルの類義語4つと、それぞれの意味の違いを紹介します。それぞれを簡潔に紹介すると、以下のとおりです。

  • リサイクルの意味は「再資源化」
  • リメイクの意味は「新たに作り直す」
  • リユースの意味は「再使用」
  • リデュースの意味は「減らす」

それぞれの違いを、詳しくみていきましょう。

リサイクルの意味は「再資源化」
リサイクルの意味は「再資源化」です。 廃棄物などの再利用を意味し、原材料として再利用する「再生利用」や、焼却して熱エネルギーを回数する「サーマルリサイクル」などがリサイクルの具体例として挙げられます 。

アップサイクルは、資源の特徴を極力そのまま活かして付加価値を高める点がポイントです。一方で、リサイクルは一度原料などの資源に戻して、新たな製品の原料として再利用することです。

つまり「生産、流通、サービス、小売」というサプライチェーンから見ると、リサイクルはものづくりの川上(生産)に向かって再利用され、一方、川下(流通)に向かって再利用されるのがアップサイクルです

例えば、リサイクルの例としては以下のようなものが挙げられます

  • ペットボトルを溶かして繊維にして衣料を作る
  • 古紙をパルプ化してノートを作る
  • ガラス瓶を溶かして食器を作る

例えば、廃材の特徴を活かしつつ家具にするのはアップサイクルですが、ペットボトルを一度資源に戻し、衣類を作るのはリサイクルです

プラスチックリサイクルについて詳しくは以下の記事で紹介しているため、ぜひあわせてご覧ください。

▶関連記事:プラスチックリサイクルとは?経済的メリットや循環型経済に取り組む企業の責任を解説

リメイクの意味は「新たに作り直す」
リメイクとは、古いモノにアレンジを加えて作り直すことをさします。元の製品の特徴を活かす点ではアップサイクルと同じですが、 リメイクは新しく作ったものの価値が向上するかどうかは問いません 。

例えば、リメイクの例としては以下のようなものが挙げられます。

  • 古い服にアレンジを加えて新しい服に作り替える
  • 裏紙を束ねて表紙に帯をつけてメモ帳にする
  • かけた食器に金継ぎを施してデザイン性をプラスする

リユースの意味は「再使用」
リユースとは、一度使ったモノを廃棄せずに何度も使うことを意味する言葉です 。手を加えずそのまま使用する点がアップサイクルとは異なります。

例えば、リユースの例としては以下のようなものが挙げられます。

  • 不要になった衣類や家具などを、必要とする人にゆずる
  • 瓶製品の中身がなくなったら購買者がお店に返し、お店側が瓶製品を再利用する
  • 着なくなった服を中古ショップやフリマサイトで売る

リデュースの意味は「減らす」
リデュースとは、ゴミの排出量を減らす、少なくすることを意味します。 リユースやリサイクルで資源を有効活用しても、最終的にはゴミの処理にかかる費用とエネルギーが必要である点は変わりません。

ゴミの発生を増やすそもそもの要因となる行動を避け、ゴミの排出量を減らすのがリデュースです 。

例えば、リデュースの例としては以下のようなものが挙げられます。

  • 必要以上にモノや食品を購入しない
  • 買ったモノを長く使用する・使い切る
  • マイバックを持参してレジ袋を使わない

リデュースを進めるために、リフューズに取り組むことも重要です。リフューズとは、ごみになるものを拒否することを意味しており 、以下のようなものが挙げられます。

  • ゴミの原因となる過剰包装などを拒絶、拒否すること
  • 不必要なものを買わない。同時にもらわない、断る
  • コンビニなどで不要なストローや箸などをもらわない
     

アップサイクルのメリット

アップサイクルを推進するメリットには、主に以下の3つが挙げられます。

  • 省エネルギーによる環境負荷の低減
  • コスト削減につながる
  • 企業イメージの向上につながる

それぞれのメリットを、詳しくみていきましょう。

省エネルギーによる環境負荷の低減
リサイクルは、資源に戻す過程で分解・溶解に伴いエネルギーを使用しますが、製品の特徴をそのまま活かすアップサイクルではそれに比べると大きなエネルギーを必要としません。

そのため、アップサイクルの推進は、天然資源消費の抑制や二酸化炭素などの温室効果ガス排出の抑制につながり、環境負荷の低減に対する効果が期待されています 。

コスト削減につながる
アップサイクルは廃棄物や不要な素材を再利用しつつ、付加価値を生み出して製品を作ります 。材料、原料などの資源に戻す手間や工場運営のコスト、新たな素材の生産・仕入れコストが不要なため、再利用のために必要なコストを抑えられます。

また、アップサイクル製品は、従来にはない新たな付加価値を産みます。製品単価を高めることができるため、企業の収益向上にも貢献するでしょう。

企業イメージの向上につながる
アップサイクルへの取り組みは、環境負荷を考慮した製品作りとして企業のイメージアップにつながるかもしれません 。

近年では、環境、社会、ガバナンスを重視しながら持続可能な経済成長を目指す「ESG経営」が注目されています。なお、ESGとは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を取ってつくられた言葉です。

自社の利益だけではなく環境負荷を考慮したモノづくりは、消費者からのイメージアップにつながる他、投資家が投資先を決める際の意思決定にも影響をおよぼす可能性も期待できるかもしれません。

アップサイクルのデメリット・課題  

アップサイクルにはメリットがある一方で、以下のデメリットや課題が考えられます。

  • 安定した材料の確保が難しい
  • 廃棄物削減とのジレンマ

それぞれのデメリット・課題点を、詳しくみていきましょう。

安定した材料の確保が難しい
アップサイクルを事業として継続させるためには、安定した材料の確保が必要です。 例えば、アップサイクルでバッグを作るためには、バッグの素材となる廃棄物がなければいけません 。

しかし、限定された特定の素材が必要な場合、同じタイミングで廃棄物が発生しているとは限らず、材料が安定供給されなければ必要な時に必要なものを作れません。材料供給の不安定さが解決しなければ、ビジネスとして成立しにくい点がデメリットといえます。

廃棄物削減とのジレンマ
廃棄物がなければアップサイクルはビジネスとして成立しにくいですが、反対に安定した廃棄物がある状況はそもそもの思想に反するため、アップサイクルはジレンマを抱えています 。

また、アップサイクルが普及して世間に定着すると「アップサイクルで新しい商品を作れるなら、廃棄物を減らさなくていい、または廃棄してもよい」などの誤解にもつながりかねません。

廃棄物ゼロを目指して行われている取り組みが廃棄物の増加につながる可能性がある点も、アップサイクルが抱えるジレンマです。廃棄物ゼロを目指すには、アップサイクルとは別に、循環型デザインのビジネス設計が必要になります。

アップサイクルに取り組んでいる企業の事例を紹介

実際にアップサイクルに取り組んでいる企業の一例は以下のとおりです。

  • 廃棄繊維のアップサイクル
  • 廃漁網のアップサイクル
  • 食品ロスのアップサイクル

それぞれの例を詳しくみていきましょう。

事例①廃棄繊維のアップサイクル
日本では年間200万トンの廃棄繊維が出ていますが、衣類などの繊維素材は様々な素材が混紡、混織されているため、リサイクル率はわずか25%程度です ※。

しかし、素材分別が難しい廃棄繊維を色で分別し、従来にはなかった好感度が高いデザイン性のある素材を生み出して製品を作っている企業があります。

環境負荷の大きい脱色工程を踏まなくとも、好感度の高い様々な色合いを作り出す技術により、圧縮フェルトや糸、ボードなど様々なアップサイクルしたカラフルな新素材を生み出すことに成功しました。

その企業は、自社でブックカバーやペンケース、バッグなどのオリジナル商品を作ったり、有名ブランドと共同で商品を作ったりしています

※ 出典:経済産業省 近畿経済産業局「色で素材を循環する、廃棄繊維のアップサイクル ~株式会社colourloop~」

事例②廃漁網のアップサイクル
北海道でのサケ漁やマス漁で使用される網は1〜2年で取り換えられるため、魚網の廃棄量は膨大です 。ある企業では廃魚網を回収し、鞄工業組合に属する数社のメーカーへ依頼して付加価値の高い鞄にアップサイクルしています※。

永久保証付き、修理して長く使えるなどの特徴もあり、廃棄物のアップサイクルに成功している一例です。

※ 出典:環境省「ファッションに発見!プラスマアクション 廃棄されるはずだった漁網から鞄ができた。企業が連携した“アップサイクル”で海洋ごみを減らす」

事例③食品ロスのアップサイクル
飲食店や小売店から出る廃棄間近の商品を、クラフトビールにアップサイクルする企業もあります※。 従来であればフルーツを使用している部分を炭水化物に変えて、麦芽の酵素・酵母で澱粉を糖に、糖をアルコールと炭酸に分解し、クラフトビールを製造しています。

事業系食品ロスで大きなウェイトを占める澱粉や糖に注目し、アップサイクルに活用したビジネスモデルです。フードロスの削減や、廃棄処理過程で発生する二酸化炭素削減に貢献している他、廃棄物回収業者への支払い削減にもつながっています。

※ 出典:観光局「フードテックを活用した食品ロス削減技術紹介集」

アップサイクルを実践・成功させるためのポイント

アップサイクルを実践・成功させるためには、以下のポイントを意識しましょう。

  • 身近にできるアップサイクルに取り組む
  • 展示会に参加して最新情報を取り入れる

身近にできるアップサイクルに取り組む
アップサイクルは、以下のように身近なものでも挑戦できます 。

  • 着なくなった服をバッグやポーチにする
  • 空き瓶・ペットボトルを照明や鉢にする
  • コーヒーやティーバッグを脱臭剤・消臭剤にする

小さなアップサイクルでも、経営に活かせる大きなヒントにつながる可能性があるでしょう。

展示会に参加して最新情報を取り入れる
企業としてアップサイクルのビジネスを開始する場合は、まず情報収集が大切です。インターネットでも情報は得られますが、具体的な事例や活用方法などを知るためには展示会などへ参加することも選択肢のひとつでしょう。

なかには循環型経済(サーキュラー・エコノミー)に特化した展示会もあるため、参加を検討してみてください。

アップサイクルを実践している企業の参加や、企業が取り入れている製品の展示などにより、より詳しい情報が得られ、アップサイクルを取り入れたビジネスの具体的なイメージにつながるかもしれません。

アップサイクルは、自社だけではなく他社と協力して共同で進めるケースもあります。展示会への参加によって、他社と課題・技術の共有、取引先の開拓などにつながる可能性もあるので、ビジネスの展開を考えている方は、展示会への参加をおすすめします。

アップサイクルなどの循環型経済に興味があるなら展示会への参加がおすすめ

アップサイクルをはじめとする循環型経済に興味がある方は、「サーキュラー・エコノミーEXPO」へぜひご来場ください。

サーキュラー・エコノミーEXPOは、サーキュラーデザイン、サステナブルマテリアル、PaaS(製品のサービス化)支援、資源回収・リサイクル・再製品化技術などが出展する展示会です。

サステナブル経営を実現したい企業の経営者、経営企画、設計・製造部門などが来場する専門展のため、アップサイクルに関連した循環型経済のヒントが得られるかもしれません。

事前来場登録をすれば無料で入場可能な他、出展側としての参加もでき、自社製品アピールの場にもご活用いただけます。様々な業種の経営層に直接コンタクトがとれ、商談につながる可能性もあるでしょう。

課題の共有や技術の提案、導入相談、新規取引先開拓などの機会に、ぜひサーキュラー・エコノミーEXPOをご活用ください。

サーキュラー・エコノミーEXPOの詳細は以下のとおりです。

■サーキュラー・エコノミーEXPO
「サーキュラー・エコノミーEXPO」出展・来場案内はこちら

会場では、アップサイクルを実践している企業とのつながりや生きた情報を得られるので、循環型経済に興味がある方は、ぜひご来場ください。

アップサイクルを実践して新しい価値を生み出そう

アップサイクルは、廃棄されるはずのモノに、新たな付加価値を持たせて再利用することをさします。元の商品より価値をアップグレードして再利用する点がアップサイクルの大きなポイントです。

環境負荷の低減にもつながるため、SDGsの持続可能な開発目標のひとつである「つくる責任、つかう責任」のキーポイントとして、近年アップサイクルに注目が集まっています。

アップサイクルや循環型経済に関する情報を収集したい方は、循環型経済に特化したサーキュラー・エコノミーEXPOにぜひご来場ください。

「サーキュラー・エコノミーEXPO」詳細はこちら

 

▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、サーマルリサイクル技術に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他