リチウムイオン電池の種類は?
材料・形状の特徴と安全性・用途を解説

充電し繰り返し使えるリチウムイオン電池は、長寿命・小型・軽量という特徴から幅広い製品に活用されています。エネルギー設備や産業用ロボットの他、スマートフォンやパソコン、電気自動車など身近な活用事例も多いです。

また、カーボンニュートラルの潮流や再生可能エネルギーの普及、EV化の流れを背景に、リチウムイオン電池の世界市場規模は拡大傾向にあります。2023年の市場規模は推計459億5,000万米ドルで、2030年には1,062億5,000万米ドルに達する予測 ※もあり、今後さらに注目される分野であることは間違いありません。

ただ、一口にリチウムイオン電池といっても、使用材料や形状によって種類が分かれ、それぞれ特徴が異なります。そこで本記事では、リチウムイオン電池の種類や材料・形状による特徴だけでなく、安全性や用途の具体例まで解説します。

リチウムイオン電池の種類や安全性に関する知識を深め、用途に合う製品を導入しましょう。

※出典:360iResearch社「リチウムイオン電池材料市場:タイプ別、用途別-2024-2030年の世界予測」

 

リチウムイオン電池は長寿命・小型・軽量が特徴の蓄電池

リチウムイオン電池は「リチウム」という金属を使用した電池で、充電により繰り返し使える蓄電池(二次電池)に該当します。

リチウムイオン電池の主な材料は、正極・負極・電解液・セパレータの4つです。 リチウムイオンが電解液のなかの正極・負極を移動する際に充電・放電する仕組みで、正極・負極は接触しないようセパレータで仕切られます。

リチウムイオン電池のメリットは、長寿命かつ小型・軽量である点です。 目安として約500回の充電・放電サイクルに耐え、スマートフォン用なら2~3年程度、 製品によっては6~10年程度使用できる場合もあります。

リチウムイオン電池の用途は幅広く、産業用から身近な機器まで様々な製品に導入可能です。詳しくは後述しますが、主な活用事例としては、スマートフォン、パソコン、タブレット、電気自動車、通信基地、産業用ロボット、再生可能エネルギー設備などが挙げられます。

【正極材料】リチウムイオン電池の種類分け

リチウムイオン電池は、正極材料による種類分けが可能です。以下のように様々な正極材料があり、それぞれ特徴が異なります。

  • コバルト系リチウムイオン電池
  • マンガン系リチウムイオン電池
  • ニッケル系リチウムイオン電池
  •  NCA系リチウムイオン電池
  • リン酸鉄系リチウムイオン電池
  • 三元系(NMC)リチウムイオン電池
     

コバルト系リチウムイオン電池
コバルト系リチウムイオン電池は、正極材料にコバルト酸リチウムを使用しています。1991年に世界ではじめて商品化され※、かつてはモバイル機器などに多く使われていました。

しかし、原材料のコバルトが高価で、熱暴走による発熱・爆発の危険があるため、現在はあまり使われていません。

※出典:国立研究開発法人産業技術総合研究所「次世代二次電池とは?―リチウムイオン二次電池を超える電池の実現にむけて―科学の目でみる、 社会が注目する本当の理由」

マンガン系リチウムイオン電池
マンガン系リチウムイオン電池は、正極材料にマンガン酸リチウムを使用しています。 マンガン系リチウムイオン電池は熱安定性に優れ安全性が高い ため、主に電気自動車の車載用電池に使われています。

また、原材料がコバルトの10分の1程度で安価 な点もメリットです。

ニッケル系リチウムイオン電池

ニッケル系リチウムイオン電池は、正極材料にニッケル酸リチウムを使用しています。 他のリチウムイオン電池に比べて容量が大きいメリットがありますが、一方、過充電時の発煙・発火リスクが高く 安全性に課題があるため、実用化は難しいとされています。

NCA系リチウムイオン電池

NCA系リチウムイオン電池は、正極材料にニッケル・コバルト・アルミニウムを使用しており、原材料の頭文字を取って「NCA系」と呼ばれます。 エネルギー密度が高く、一度の充電で長く持つメリットがあり、電気自動車や医療機器に用いられています。

NCA系リチウムイオン電池の特徴は、ニッケルベースにコバルト・アルミニウムを添加し、負極にセラミック層コーティングを施すことで耐熱性を改善した点です。これによりニッケル系リチウムイオン電池の課題であった安全性を高めることに成功しています。

リン酸鉄系リチウムイオン電池

リン酸鉄系リチウムイオン電池は、正極材料にリチウム・鉄・リンを使用したリチウムイオン電池です。 原材料の鉄はマンガンよりも安価ですが、電池の製造コストがやや高いため、コスト面のメリットはあまりないとされます。

リン酸鉄系リチウムイオン電池のメリットは、熱暴走のリスクが低く、安全性が高い点です。 また、リチウムイオン電池のなかでも寿命が比較的長いため、モバイルバッテリーやポータブル電源、電動工具から電気自動車まで幅広く使われています。

三元系(NMC)リチウムイオン電池

三元系リチウムイオン電池は、正極材料にニッケル・マンガン・コバルトを使用しています。原材料の頭文字を取って「NMC」とも呼ばれるリチウムイオン電池です。

三元系リチウムイオン電池は車載向けとして改良された背景から、コバルト系よりも安全性の高い点が特徴です。 また、リン酸鉄系より寿命は短いものの、エネルギー密度が高いメリットもある ため、主にハイブリッド自動車などの車載用電池として使われています。

【負極材料】リチウムイオン電池の種類分け

リチウムイオン電池の負極材料の種類は、主に以下の3つに分けられます。

  • 炭素系材
  • チタン酸リチウム
  • リチウムとの合金材料

リチウムイオン電池の負極材料として一般的なのは、炭素系材料の黒鉛(グラファイト)です。ただし、なかには低結晶性のハードカーボンが使われた製品もあります。

負極材料にチタン酸リチウムを用いた製品は、チタン酸系リチウムイオン電池と呼ばれます。エネルギー密度が低い一方、安全性が高く急速充電が可能な点や、比較的寿命の長い点がメリットです。主な用途には、モバイル医療機器や大規模蓄電システムがあります。

リチウムとの合金材料を負極に使用したリチウムイオン電池は、理論的には容量を大きくできますが、寿命が短い傾向にある点がデメリットです。そのため、炭素系材料との複合化が検討されています。

【電解質の状態】リチウムイオン電池の種類分け

リチウムイオン電池は、電解質の状態によっても種類分けが可能です

一般的に、リチウムイオン電池には液状の電解質(電解液)が用いられますが、ポリマーを加えてゲル状にした電解質を使用する場合もあります。 電解質がゲル状のリチウムイオン電池は、リチウムポリマー電池(リチウムポリマー系リチウムイオン電池)と呼ばれます。

リチウムイオン電池とリチウムポリマー電池は、電解質の状態に違いはあるものの、電気的な構造は同じです。 リチウムポリマー電池はゲル状の電解質を用いている分、リチウムイオン電池より形状加工の自由度が高い点がメリットです。

また、液漏れしにくいため安全性が高いともいわれ、 携帯電話、スマートフォン、タブレット、デジタルカメラ、ドローンなど幅広い製品に利用されています。

【形状】リチウムイオン電池の種類分け  

リチウムイオン電池は形状の種類も多岐にわたります。代表的な形状は、円筒型・角型・ラミネート型(パウチ型)の3種類です。 形状によって工法や特徴が変わるため、装置の用途や容量、寸法などにあわせて適切な製品を選びましょう。



蓄電池の種類はリチウムイオン電池を含めて4つ

リチウムイオン電池は、充電により繰り返し使える蓄電池(二次電池)の一種です。蓄電池の種類は大きく分けて4つで、リチウムイオン電池の他に鉛蓄電池・ニッケル水素電池・NAS電池があります。

鉛蓄電池は、蓄電池のなかでももっとも古い歴史を持ち、安価で過充電に強い点が特徴です。広い温度範囲で作動するため、車のバッテリーやフォークリフトの主電源などに使われています。

ニッケル水素電池は過充電・過放電に強く、急速充放電が可能な蓄電池です。主に乾電池型二次電池やハイブリッドカーの動力源に使われています。

NAS電池は、日本ガイシ株式会社がはじめて実用化した蓄電池です。 大容量でエネルギー密度が高く、長寿命な点がメリット ですが、作動温度が約300度と高いため、使用するには安全上の対策が必要 です。

リチウムイオン電池の安全性は?

リチウムイオン電池の安全性は、何を原材料にしているかに左右されます。

前述のとおり、熱暴走による発熱・爆発の危険があるコバルト系の正極材料を使うものは危険性が高いでしょう。反対に、熱暴走のリスクが低いリン酸鉄系の正極材料を使うものは、比較的安全性が高いといえます。

リチウムイオン電池は、外部から強い衝撃や圧力が加わると発熱・破裂・発火の可能性があるため、取扱に注意が必要です。その他、過充電・過放電や高熱になる環境はリチウムイオン電池の劣化を早める原因となります。

リチウムイオン電池は、廃棄時にも配慮を要します。まず、解体や水濡れは安全性の面から厳禁です。次に、廃棄方法はリサイクルするか、産業廃棄物として廃棄物処理業者に処分を依頼する かのいずれかとなります。

リサイクルの場合、小型のリチウムイオン電池なら家電量販店やホームセンター、自治体の回収BOXが利用可能です。

一方、大型のリチウムイオン電池は、製品によって適切な対応が異なります。車載用バッテリーはガソリンスタンドやカーショップ、不用品回収業者に回収してもらい、定置用蓄電池は販売店かメーカーに回収・廃棄方法を問い合わせましょう。

リチウムイオン電池の主な用途

リチウムイオン電池は、身近な電子機器類や車両の他、インフラ設備や産業用機器など幅広い分野で利用されています。主な用途の具体例は以下のとおりです。

  • 電子機器類…スマートフォン、パソコン、タブレット
  • 車両…電気自動車、電動バイ
  • インフラ設備…エネルギー設備、通信基地、データセンタ
  • 産業用機器…産業用ロボット、医療機
  • その他…ドローン、人工衛星、潜水艦

リチウムイオン電池は種類によって特徴が異なるため、用途に合わせた活用が求められます。リチウムイオン電池の導入を検討する場合は、使用製品の特性や使用環境や合わせた電池の選択を慎重に検討することが重要です。

そのための情報収集の具体案として、本やインターネットを活用する方法が挙げられますが、こうした方法で調べられる情報には限界があるかもしれません。リチウムイオン電池の活用事例や注意点をより詳しく知るには、展示会への参加も選択肢としておすすめです。

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リチウムイオン電池を導入するなら用途に応じて適切な種類を選ぼう

リチウムイオン電池は材料や形状によって種類が分かれ、それぞれ特徴や適した用途が異なります。

また、リチウムイオン電池は長寿命・小型・軽量とメリットが多く、幅広い用途がある一方、安全性に配慮しながら活用する必要があります。導入で失敗しないためには、材料や形状による特徴や安全のための注意点を理解し、適切な種類を選ぶことが大切です。

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▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、サーマルリサイクル技術に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他