CO2排出量の計算方法を解説!
温室効果ガス削減を踏まえた脱炭素経営が重要な理由とは

温室効果ガスの排出を全体として実質ゼロにする「カーボンニュートラル」が主流である現代では、脱炭素経営の重要性が高まっています。

温室効果ガスを削減するためには、まず自社のCO2排出量を計算し把握することが大切です。一定規模の企業であればCO2排出量の報告義務があるため、計算方法を理解しましょう。

本記事では、CO2排出量の計算方法を知っておくべき理由を解説するとともに、具体的な算出方法も紹介します。

政府は2050年までに温室効果ガスをゼロにすると宣言しており、今後ますます脱炭素社会に向けた行動が求められる可能性があるでしょう。まだ脱炭素経営に踏み出せていない方も、ぜひご一読ください。

CO2排出量を計算する理由・必要性

CO2排出量の計算方法を知り、実際に計算することの必要性として、以下の理由が挙げられます。

  • 気候変動を緩和するため温室効果ガス削減に向けて国際的に取り組む必要がある
  • 日本も2030年目標達成に向けて高い削減目標を公約し取組中
  • 温対法・省エネ法に該当する特定の企業には報告義務がある

それぞれ、以降で簡潔に紹介します。
 

気候変動を緩和するため温室効果ガス削減に向けて国際的に取り組む必要がある
近年、国際的に温室効果ガス削減に向けた取り組みが加速している状況です。

そもそも気候変動が進むのは、人間の活動によってCO2(二酸化炭素)やメタンなどの温室効果ガスが大量に排出されることが原因だと考えられています。

特にCO2は化石燃料(石炭・石油など)の燃焼によって大量に排出されており、こうしたエネルギー起源のCO2は、日本で発生する温室効果ガスの84%を占める※とされています。

温室効果ガスによる気候変動の問題は、日本だけではなく国際的な問題です。2015年の気候変動枠組条約締約国会議(COP)で採択された「パリ協定」 では、温室効果削減に関する国際的な取り決めがなされました

パリ協定では、全ての国が温室効果ガスの削減目標を5年ごとに提出・更新するよう定められています。こうしたパリ協定の枠組みを受けて、日本では、2030年までに46%の温室効果ガス削減(2013年比)を目標として掲げています。

日本も国際社会の一員として、温室効果ガス削減に向けた取り組みが求められるでしょう。

※出典:経済産業省 資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2022年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」」

日本も2030年目標達成に向けて高い削減目標を公約し取組中
前述のとおり、日本では2013年度比で46%の温室効果ガス削減を目標として掲げました。2021年度の確報値では、2013年度比で20.3%の削減を達成していますが、46%という目標に向け今後対応の加速が必要です。

なお、前年度比では2%の増加となっており、これは新型コロナウイルスによる行動制限がある程度落ち着き、経済活動が回復したことに起因すると考えられます。

また、各国が掲げた目標を達成するために、進捗状況を定期的に共有して専門家のレビューを受けることがパリ協定にて定められており、2023年がその1回目の年となりました。

つまり、目標を掲げるだけでなく実効性が求められており、長期的に削減へ向けた取り組みを続ける必要があります。報告が義務化され、現状では目標まで未達成である状況を考えると、企業としてCO2排出量の計算方法を理解することは重要です。

温対法・省エネ法に該当する特定の企業には報告義務がある
「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」に基づき、平成18年4月1日から温室効果ガスを多量に排出する者(特定排出者)には、温室効果ガス排出量の報告が義務付けられ ています。

事業によって排出する温室効果ガスの種類に応じた条件に該当する場合、自ら温室効果ガスの排出量を計算し、報告しなければいけません。

環境省ホームページ「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度 制度概要※1」を参考に、温室効果ガスの種類・対象者をまとめました。

排出量算定の対象となる活動に関しても、同様の環境省ホームページから詳細が確認できます。条件に該当する場合には報告の義務があるため、確認しましょう。

また、「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)」 でも、条件に該当する一定規模以上の事業者 には、以下のような報告が義務付けられています。

  • エネルギー管理者等の専任義務
  • エネルギー使用状況等の定期報告義務
  • 中長期計画の提出義務

詳しい条件は経済産業省のホームページ※2で確認できます。温対法とあわせて、条件に該当するかご確認ください。

※1出典:環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度 制度概要」
※2出典:経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ法の概要」

CO2排出量の計算方法

CO2排出量を計算する必要性を理解したら、実際にCO2排出量を計算しましょう。CO2排出量の計算に必要な前提知識とあわせて紹介するので、参考にしてください。

CO2排出量を算出する前に知っておきたい知識

CO2排出量を計算するにあたり、いくつかの専門的な用語が用いられます。

  • 活動量
  • 排出係数(排出原単位)
  • 地球温暖化係数

活動量とは、事業者が行った活動によって、どの程度のCO2が排出されるかを示す指標です。例えば、電気・ガスの使用量、燃料の使用量などが該当します 。

排出係数は、活動量あたりどの程度の量のCO2が排出されるかをあらわす数値です 。例えば、「電気1kWh使用あたり」「貨物の輸送量1トンキロあたり」のCO2排出量などが該当します。

地球温暖化係数は、事業活動の温室効果ガス排出量を、CO2を基準にして算出する係数をさします 。例えば、ガスや電気の温室効果排出量に地球温暖化係数をかけると、CO2に換算した排出量の算出が可能です。

排出係数・地球温暖化係数の具体的な数値などは、環境省で定められている既存のデータベース※から参照できます。

※出典:環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度 算定方法・排出係数一覧」

CO2排出量を算出する流れと計算式

CO2排出量の計算に必要な前提知識を踏まえた上で、CO2排出量計算の計算式と計算する流れを紹介します。

まず、計算を行う際の主な流れは以下のとおりです。

  1. 事業における定められた該当排出活動を抽出する
  2. 定められた算定法・排出係数で温室効果ガス排出量を算定する
  3. 「活動量×排出係数」の式を用いて活動ごとの各温室効果ガスを計算する
  4. 3で算出した温室効果ガスをCO2単位に換算する
  5. 4で算出された数値を合算する

温室効果ガス排出量の基本式は「温室効果ガス排出量=活動量×排出係数」です。CO2単位に換算する計算式は、「CO2単位に換算=温室効果ガス排出量×地球温暖化係数」となります。

温室効果ガスの種類によって排出係数などが異なるため、種類ごとに分けて計算し、それぞれに地球温暖化係数をかけてCO2換算を行います。それぞれのCO2換算した値を合計すると、CO2換算での合計排出量の算出が可能です。

サプライチェーン排出量の把握も重要

自社のCO2排出量を計算するだけでなく、サプライチェーン排出量を把握することも重要です。

サプライチェーン排出量とは、自社での直接的な排出に限らず、一連の事業活動に伴う間接的な温室効果ガス排出量も考慮して算出した合計の排出量をさします 。

例えば、原材料調達・製造・物流・販売・廃棄など、自社の事業活動以外の様々な過程のなかで、温室効果ガスが排出されているかもしれません。

サプライチェーン排出量を計算し、事業全体で発生する温室効果ガス排出量を把握すれば、削減に注力すべきポイントが見つけやすくなるでしょう。全体像の把握により、取引先業者と連携して温室効果ガス排出量の削減に邁進するのも期待できます 。

サプライチェーン排出量の計算方法

サプライチェーン排出量は、「Scope1排出量+Scope2排出量+Scope3排出量」の計算式を用いて算出します。

それぞれの計算式は以下のとおりです。

  • Scope1=活動量×排出係数
  • Scope2=活動量×排出係数
  • Scope3=活動量×排出係数(カテゴリ別に算定する)

「Scope〇」が示す意味やそれぞれの計算方法を、以下で詳しく紹介します。

※出典:環境省「01サプライチェーン排出量算定について 01サプライチェーン排出量全般」
 

【Scope1】排出量の計算方法
「Scope1」とは、燃料の燃焼や工業プロセスなど、事業者自らによる温室効果ガスの直接的な排出を意味します 。例えば、製造の過程で石炭を燃焼してCO2を排出する場合や、営業車で移動時にガソリンを使って排出されたCO2などがScope1に該当します。

Scope1排出量の計算式は、「Scope1=活動量×排出係数」です 。

使用する排出係数は燃料によって異なり、詳しくは前述した環境省のホームページ内「算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧※」にて確認できます。

※出典:環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度 算定方法・排出係数一覧」

【Scope2】排出量の計算方法
「Scope2」は、他社から供給された電力・熱・蒸気などの使用に伴う、エネルギー起源の間接的な排出をさします 。自社で使用したエネルギーが温室効果ガスの発生に起因していますが、直接的に排出しているのは電力・熱・蒸気を供給している他社となる点がポイントです。

Scope2の計算式も「Scope2=活動量×排出係数」です 。用いる排出係数は、以下の3つのうちいずれかを使用します 。

例えば、特定の電気事業者から電気を購入している場合、環境省が公表している「電気事業者別排出係数一覧」※で係数を確認し、活動量にかけると算定できます 。

※出典:環境省「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度 算定方法・排出係数一覧」

【Scope3】排出量の計算方法
「Scope3」は、Scope1・Scope2に該当しない間接的な排出です。例えば、自社の活動に関連した他社の、原材料や輸送・配送、消費者の製品使用、廃棄などに伴う排出が該当します 。

Scope3の計算式は「Scope3=活動量×排出係数(カテゴリ別に算定する)」 です。

Scope3はカテゴリが15個に分けられており、カテゴリ別に算定して合算します。カテゴリごとの活動(例) を一部紹介すると、以下のとおりです。

上記を含む15個のカテゴリの詳細は、環境省が公表している資料※で確認できます。カテゴリごとの具体的な活動の例を確認して計算し、合算しましょう。

※出典:環境省「サプライチェーン排出量の算定方法 基本的な算定手順」

CO2排出量を削減するための具体的な取り組み

温室効果ガス削減にあたりCO2排出量の計算は欠かせませんが、CO2排出量を計算するだけで終わらずに、具体的な行動へと移すことが大切です。

世界では過去にも様々な目標を掲げ、温室効果ガスの排出量削減に取り組んできました。

1997年(平成9年)に京都で開催された地球温暖化防止京都会議で採択された「京都議定書」では、20年(2008年)~24年(2012年)の5年間に、先進国全体で少なくとも5%の削減を目指すために取組が開始され、当時日本は、温室効果ガスを平成20年~24年の5年間に6%削減する目標を掲げました。

一方、パリ協定は発展途上国を含む世界全体の目標であり、温室効果ガスの具体的な削減数値は示されていませんが、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすること、そのためにできるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとることなどを合意しています。

パリ協定を転換点として世界各国で協力し、最終的には、CO2排出量がゼロの社会である「脱炭素社会」を目指しています。

日本でも、2050年までに温室効果ガス排出量をゼロにし、「カーボンニュートラル」の実現を目指すと表明しました。カーボンニュートラルとは、温室効果ガス排出量から森林などによる温室効果ガスの吸引量を差し引いて、排出量を実質ゼロにすることを意味します。

脱炭素社会・カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みの具体例として、太陽光発電、風力発電、小型水力発電、地熱発電などの再生可能エネルギーを使用したり、水素などの脱炭素エネルギーへの切り替えや、省エネ設備を導入したりすることが挙げられます。

こうした脱炭素社会を目指すことには、世界的な視点でも企業の視点でもメリットが多いです。世界の動向や企業へのメリットを踏まえて、脱炭素経営に向けた具体的な行動に取り組みましょう。



脱炭素社会に興味があるなら「脱炭素経営 EXPO」への参加がおすすめ

CO2排出量の計算方法を知りたい企業の最終的な目的は、CO2排出量の削減ではないでしょうか。CO2排出量の削減や脱炭素経営に興味があるなら、ぜひ「脱炭素経営EXPO」にご来場ください。

脱炭素経営EXPOでは、ゼロカーボンコンサル、GHG排出量の可視化、PPA・再エネ電力、エネマネ・省エネ設備、CCUS・メタネーションなど、企業向けのあらゆる脱炭素ソリューションが出展します。脱炭素経営を目指す企業の経営層や経営企画、カーボンニュートラル推進部門などが集まる専門展なので、脱炭素経営に関する情報収集を行う場として役立つでしょう。

会場では、国内外の最新技術・製品・サービスを提供する出展社と、それらを求める来場者が活発な交流を行います。脱炭素経営に必要な設備・システム導入の相談をしたり、技術を共有したりすることも可能です。

また、脱炭素経営EXPOには、出展者側としての参加も可能です。脱炭素経営に興味がある来場者へ向けて、自社製品・設備・システムをアピールできます。他社との交流により、新規受注に繋がったり、新たなパイプが構築できたりする可能性もあるでしょう。

脱炭素経営に興味がある方は、ぜひ来場や出展をご検討ください。
GX経営WEEK内「脱炭素経営EXPO」来場・出展案内はこちら

 

CO2排出量を計算したら具体的な行動に移そう

温室効果ガス削減の観点で、CO2排出量の計算は重要な意味を持ちます。一定以上の排出量がある事業者には、算定した温室効果ガスの排出量の報告が義務付けられていると覚えておきましょう。

CO2排出量の計算に加えて大切なのは、削減に向けた具体的な行動です。日本を含めた世界全体で脱炭素に向けた動きがあり、今後ますます省エネ・再エネを取り入れた経営の必要性が高まるかもしれません。

脱炭素に関する最新情報の収集、他社との情報交換の場として、ぜひ脱炭素経営EXPOをご活用ください。

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▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、サーマルリサイクル技術に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他