【カーボンニュートラルへの架け橋 4】

「エネルギーの地産地消と新しい仕掛け」

東京電力パワーグリッド(株)取締役 副社長執行役員 技監/スマートレジリエンスネットワーク 代表幹事 岡本 浩氏

今回は、2023年3月「スマートグリッドEXPO」セミナーのパネルディスカッションに登壇される、東京電力パワーグリッド取締役 岡本浩氏のインタビューをお届けします。分散型社会への移行やカーボンニュートラルの実現など時代の変化がもたらす送配電事業の課題とは?エネルギー事業の最新状況から今後の取り組みなど、セミナーに先駆けてお届けします。

・プロフィール【岡本 浩】

1993年4月、東京電力(株)入社。
電力システムに関する技術開発、実務、国際標準化などに携わり、2015年常務執行役経営技術戦略研究所長、2017年6月東京電力パワーグリッド取締役副社長。現在、同社取締役副社長執行役員技監。

 

■再生可能エネルギーの取り込みが、一番の課題

―東京電力パワーグリッドは、東京電力が他社に先行して分社化し、2016年に送配電事業会社として誕生しました。

岡本:我々は「電力流通」と言っておりますが、電気をお使いになるお客様に我々のネットワークにつないでいただいてお届けする事業です。電気の小売りと製造の部門が分社化して、流通のところだけを取り出して別の会社になっているという感じです。

 

―東京電力パワーグリッドの展望と取り組みについてお聞かせください。

岡本:一番の課題は、再生可能エネルギーをどれだけ我々のネットワークに取り込んでいけるかです。政府は再生可能エネルギーを主力電源にするとの目標を掲げており、カーボンニュートラルは非常に大きな要素となります。そのためには従来の火力発電所や原子力発電所、水力発電所のある場所ではなく、新たな場所におかれた発電所とネットワークをつながないといけません。ケースによってはネットワークをかなり増強する必要もあり、大きな課題となっています。

二つ目の課題は、再生可能エネルギーの生産と消費に時間のずれがあることです。再生可能エネルギーは、電力消費とは無関係に発電が行われます。例えば太陽光だと昼間に発電しますが、皆さんが電力をお使いになるのは明かりをつけたりする夜であったりと、時間がずれるわけです。バッテリーなどを使ってある程度の在庫はできるものの量が非常に限られます。火力発電であれば消費量に合わせて時々刻々と生産を調整することが可能ですが、再生可能エネルギーではそれができません。我々のネットワークの中には揚水発電所という巨大なバッテリーのようなものがあり、今はこれを組み合わせて使うようにしていますが、これをどううまくやるかが再生可能エネルギー導入の大きな課題となっています。

 

―政府は洋上風力による再生可能エネルギー普及に力を入れていますが、そちらへの具体的な取り組みはされていますか。

岡本:洋上風力は国内では準備計画段階で、電力広域的運営推進機関(OCCTO)がマスタープランを作っており、我々も参加して検討を重ねています。さらに具体的なところでは、海外の洋上風力関連事業に参画をしています。例えば英国ですと、洋上風力からの送電線を所有し運用メンテナンスを行う事業体に参入しています。

 

■再エネを「使い倒す」仕掛けと新構想を、セミナーで

―3月の「スマートグリッドEXPO」では、セミナー「分散型エネルギーシステムの構築と展望」をパネリスト3名のディスカッション形式で開催します。岡本さんとともに、東芝ネクストクラフトベルケ新貝秀己さん、EX4Energy伊藤剛さんにご登壇いただきますが、こちらはどのような内容になるでしょうか?

岡本:メインの議論は、分散型という形で地域に再生可能エネルギーが入っていく際に、地域のためにどのように「使い切る」のかについてです。「使い切る」「使い倒す」とよく言っているのですけれど、このためには新しい仕組みをうまく作る必要があります。従来は電力会社に任せて揚水式をはじめとする大規模な発電所を作り、それをちょっと組み合わせて運用してといったやり方でしたが、もはやそのような時代ではないのです。

今は例えばバッテリーひとつとっても、一般の皆様が電気自動車(EV)を持っている時代ですから、それらをネットワークでつなげて組み合わせて使うというような世界になっていきます。通信業界がインターネットによって変革し、さらにスマートフォンの普及によって昔だと考えられなかったコンピューティングパワーのもとで新しいサービスが提供されるようになりましたが、エネルギーの世界もそれに近いものとなってくるでしょう。分散しているリソースを「使い倒す」ために、どんな仕掛けを作れば良いのかなどをディスカッションしたいと思います。

 

―なるほど、EVは蓄電池が走っているようなものだ、とも捉えられるわけですね。

岡本:現在、東電は世界最大級の1000万キロワットくらいの揚水発電所を運用していますが、EVが今後すごく普及していずれ全部の車がEVとなったと仮定すると、EVバッテリー総量の方が一桁ぐらい多くなるんですね。分散しているEVや蓄電所の数が多くなることの大変さはあるのですが、分散しているメリットもあります。地域に分散するために、台風などでネットワークが切れて止まってしまったときも、そこにバッテリーがあればその地域は電気をつけることができるわけです。分散しているものをうまく全体として使っていく‥‥‥仮想的に大きな揚水発電所として使ったり、いざというときにはローカルで停電しているエリアの非常用で使ったり、と言うような効果が期待できるのです。

 

―非常時のレジリアンス対応に関しては、スマートレジリエンスネットワークを発足するなど積極的に取り組まれていますね。

岡本:さらに地域で産出した電気を、その地域の産業を支えるために使ったり、産業創出のために使ったりすることができるのでは、と我々は考えています。農業を一例としてあげると、ロボットやドローン、EV的なトラクターを活用するなど農業のスマート化を非常に多くの皆さんが取り組んでおられますが、そのために必要な電気を例えば太陽光でまかなうと、スマート化がさらに進んでうまく使えば電気が余ってくるので、それを地域にEVバスを走らせるのに使おう、ドライバー不足の問題を自動運転で補おう、といったところにつながっていきます。そしてEVバスの路線がハブアンドスポークの形になるとハブの部分で充電することになります。だからそこに電池をたくさん置いておくと、その拠点が電気を必ず使える避難場所になる‥‥ということも可能なのです。分散したエネルギーを起点に、その地域の産業を創出したり、人をうまく集める仕掛けを作ったりすることは、幅広く言うと「街作り」につながるのではと思っています。

このような構想を東電グループ全体で考えてきておりますが、同様に東芝ネクストクラフトベルケさんではそのためのITプラットフォーム提供を行う動きをされていたり、EX4Energyさんでは分散型エネルギーをつなぐためのソリューション開発を始められておられたりします。我々送配電会社もいろいろと取り組むのですが、ITプラットフォームやつなぐための仕掛け作りといったところもやらないといけないわけで、当然、いろいろなところで連携や協業も行います。今度のセミナーは、その代表的なところの3社がディスカッションをするわけで、展開を楽しみにしています。

 

―分散型社会では、新しいエネルギーの形が新しいビジネスのチャンスを生み、地域の活性化につながる良い循環ができることを目指すわけですね。

岡本:そうですね、地域と事業者様そして我々と、「三方良し」でありたい考えています。今はまだ残念ながらそうなっていません。再エネと地域との共生がうまくいかない、とにかくネットワークをたくさん作ることが先にたち稼働率が下がってしまう等の状態となっています。これをいかにエネルギーの地産地消へと転換できるかが、「三方良し」となる大きなテーマだと思います。政府がFITからFIPへと制度を転換しようとしていますが、これもまさに同じ方向を目指してもらえているのではないでしょうか。

 

ーエネルギーの地産地消ですか。仕掛けも制度もどんどん変わっていくことが分かりました。

岡本:かつてEX4Energyの伊藤さんと私、あとお二方の4人でユーティリティ3.0と言う概念を提言したのが5年半ほど前です。そのときには、普及したEVが移動する分散型エネルギーとなることで運輸とエネルギーが一体化というか融合してくるとの発表を本に書きました。そして現在は、最終的には物流とICTとエネルギーの3つがインフラとして融合してくるのではないかと思っています。国が「デジタル田園都市国家構想」を掲げていますが、これもまた今私が申し上げたようなことを狙っているのではと感じています。この辺りのお話もセミナーで触れていきたいですね。とにかく日本を元気にするようなことができれば、というのが私の思いです

<スマートエネルギーWeek>

会期:2023年3月15日(水)~16日(金)10時~18時(最終日のみ17時まで)
会場:東京ビッグサイト
主催:RX Japan 株式会社

※11月17日現在。最新情報は展示会HPをご確認ください

スマートエネルギーWeek 公式HP