サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?
対象やメリット・デメリットなどを解説

サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?対象やメリット・デメリットなどを解説

サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、原材料、素材、部品の調達から販売、アフターサービスまでのサプライチェーン全体を効率的に管理するための手法です。

サプライチェーンに多くの企業が関わるなか、企業の壁を超えて、全体を最適化することを目的として導入が進められています。企業の競争力強化や在庫の適正化に向け、サプライチェーンマネジメントの重要性は増しています。

また、脱炭素化の実現が世界的な潮流となるなか、サプライチェーン全体で環境負荷の低減に取り組むことが重要です。サプライチェーンの複雑化に対応するため、専門知識を有するハイレベル人材の育成やデジタルツインなど先端技術の活用も求められます。

本記事では、サプライチェーンマネジメントの概要やメリット・デメリット、今後のサプライチェーンマネジメントに深く関わる考え方・技術などを解説します。


▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)

肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授

プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステムの開発、導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」「市村地球環境産業賞」他 資源循環、エネルギーシステムに関する表彰受賞。

その後、経営企画、事業企画等に従事し、技術経営、サプライチェーンマネージメント及び事業継続マネジメント等を推進。

2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて環境経営支援、資源エネルギー技術開発等など社会実証に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 内閣府国土強靭化推進会議 委員他



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サプライチェーンマネジメント(SCM)とは

サプライチェーンとは、原材料、素材、部品の調達から販売、アフターサービスの提供まで、商品やサービスが消費者に供給される一連のプロセスを示す用語です。サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、サプライチェーンを一元的に管理し、最適化するための経営管理手法をさします。

企業が商品やサービスを消費者に届けるまでには、原材料、素材、部品の調達や生産、輸送、アフターサービスなど多くのプロセスが存在します。企業内の調整だけでなく、サプライヤーや運送業者、小売業者や取引先など、多くの企業との連携も欠かせません。

サプライチェーンマネジメントでは、IT技術をフル活用し、リードタイムの短縮やロジスティクスの効率化などを目指します。
 

サプライチェーンマネジメント(SCM)の対象

サプライチェーンは、商品を生産・販売するメーカーを例にとると、以下のようなプロセスで構成されます。

  • 商品の開発
  • 原材料、素材、部品の調達
  • 在庫管理
  • 商品の製造
  • 物流・販売
  • アフターサービス、廃棄

サプライチェーンマネジメントでは、これらの各プロセスにおけるモノ・カネ・情報の流れを管理します。それぞれの情報を共有して需給予測や在庫管理などを行い、サプライチェーン全体の最適化を図ることが主な目的です。
 

サプライチェーンマネジメント(SCM)が重要視される理由    

サプライチェーンマネジメントが重要視される理由のひとつには、サプライチェーンのグローバル化が進んだことが挙げられます。

1990年代後半以降、企業はコストの低い国・地域での生産を進め、国際的な分業体制が構築されました※1。

サプライチェーンの対象である国・地域において政治情勢が変化し、政権交代による対日政策が変化した場合や、国・地域間での貿易摩擦、関税措置をはじめとした新たな取引規制が発生した場合、サプライチェーンに大きな影響を及ぼす可能性があります。

日本は原油のほとんどを中東地域に依存しており、地理的条件や資源調達先の偏在による地政学リスクへの対応も喫緊の課題です。

そのため、日本政府は「経済安全保障推進法」に基づき、医療品や半導体、天然ガス、重要鉱物などを特定重要物資として指定し、それらの安定供給確保に取り組む企業を支援することで、サプライチェーンの強靱化を図ろうとしています。

こうした不確実性が高まる環境下で、複雑化するサプライチェーンに対応するため、サプライチェーンマネジメントへの注目が高まっています。

また、サプライチェーンマネジメントは近年重要視される脱炭素化とも密接に関係しています。

2015年、気候変動問題への国際的な対策としてパリ協定が合意されました。近年では、国だけでなく、企業にも温室効果ガス削減に取り組む脱炭素経営の重要性が高まっています。

なかでも、自社内での直接的な排出(Scope1・2)だけでなく、間接的な排出(Scope3)も含めて、温室効果ガス排出量の低減が求められています。原材料・素材・部品の調達や製造、販売など一連のプロセスで生じる温室効果ガス排出量を低減が重要視されています。

そのため、サプライチェーン全体での脱炭素化を効率的に推進する上で、サプライチェーンマネジメントは不可欠な手段です。

さらに、気候変動を含む地域災害が各地で頻発しているなか、グローバル化した調達、販売網が平時のみならず有事にも適切に機能し、強靭なサプライチェーンマネジメントを構築するためにも、モノや情報を適切に管理できるサプライチェーンマネジメントの重要性が一層高まっています。

Scope1・Scope2・Scope3の図※2

※1出典:内閣府「日本経済2021-2022」
※2出典:環境省「サプライチェーン排出量全般」


サプライチェーンマネジメント(SCM)を導入するメリット

サプライチェーンマネジメント(SCM)の導入は、企業に多くのメリットをもたらします。以下では、在庫管理の適正化やリードタイムの短縮をはじめとする主なメリットを解説します。
 

在庫管理の適正化

サプライチェーンマネジメント(SCM)を導入することで、メーカーや卸業者、原材料のサプライヤー間でのリアルタイムな情報共有が可能となり、適切な在庫管理に役立ちます。

サプライチェーン全体の情報の把握は、データ分析やAIを活用した需要予測ができます。これにより、精度の高い生産計画や在庫の確保が実現し、需要が増加した際の在庫不足による機会損失を防ぐことが可能です。
 

リードタイムの短縮

リードタイムとは、開発・原材料調達・生産などの各プロセスで、開始から完了までにかかる所要時間をさす用語です。例えば、多くの在庫を保有すれば必要な時に必要な量を供給できるため、リードタイムの短縮が可能です。ただし、過剰な在庫を抱えるリスクが生じます。

サプライチェーンマネジメントを活用して情報共有や需要予測が可能になると、適正な在庫数を把握しやすくなり、在庫リスクを抑えつつリードタイムの短縮が可能です。納品までの時間短縮に役立ち、顧客満足度の向上に繋がる重要なメリットのひとつです。
 

サプライチェーンコストの削減

サプライチェーンマネジメントの導入は、コスト削減に有効です。例えば、サプライチェーンの最適化を通じて仕入れ先の見直しを行うことで、調達コストを削減できる場合があります。

また、適正な在庫数や配送回数を設定し、物流を効率化することで無駄を省き、物流コストの削減に繋がります。
 

顧客の利便性向上

顧客の利便性が向上する点もメリットのひとつです。物流プロセスの最適化が実現すれば、顧客の希望する日時での配送をはじめ、柔軟なニーズへの対応が可能になります。

また、顧客からのフィードバックをサプライチェーン全体で共有すると、顧客ニーズやトレンドを反映しやすくなります。
 

リスクへの対応

サプライチェーンの管理では、各国の政情不安、自然災害、パンデミック、原材料の価格変動、貿易摩擦などのリスクに対し、迅速な対応が重要です。サプライチェーンマネジメントを導入することで、各プロセスで生じるリスクの洗い出しや適切な管理を実現でき、災害などの有事の際にも影響を最小限に抑えることができます。
 

サプライチェーンマネジメント(SCM)のデメリット

サプライチェーンマネジメントの導入は複数のメリットがある一方で、実現にはデメリットも存在します。以下で、導入時に想定されるデメリットを解説します。

導入のハードルの高さ

サプライチェーンは、商品の開発から販売までの垂直的な流れに加え、国内外の提携企業との水平的な関係で構築される供給網です。

各部門・企業間でのリアルタイムな情報共有を実現するためには、情報のデータ化や信頼関係の構築、セキュリティ対策などの課題を解決する必要があります。

多くのプロセスで幅広い検討が必要となるため、自社に適切なサプライチェーンマネジメントを導入するには、一定のハードルが存在します。
 

費用や時間の負担

サプライチェーンマネジメントシステムの導入には、システム構築に必要なITインフラの整備やランニングコストなど、多くの費用がかかります。

また、導入にあたっては、対象範囲の選定や人材の確保、インフラの構築、情報共有ルールの確立などが必要であり、相応の時間的な負担がかかる点も考慮すべきデメリットです。
 

サプライチェーンマネジメント(SCM)における導入の課題

サプライチェーンマネジメントにおいては、自社の供給網を正確に理解し、専門知識を有する人材の育成が重要な課題のひとつです。

サプライチェーンマネジメントを導入する際には、企業内で原材料の調達から商品の生産や販売、在庫管理に至るまで、数多くの業務管理が求められます。これらを適切な仕組みとして構築するためには、自社業務を熟知し、マネジメントに落とし込める高度なスキルを持つ人材が不可欠です。

また、近年は各国間の経済連携協定(EPAやFTAなど)が拡大しているため、担当部門では各貿易制度への高い理解が求められます。

さらに、脱炭素や資源循環など各国、各地域で独自の政策や規制が推進される場合もあるため、国際的な環境問題の知見や知識も必要になります。

なお、サプライチェーンマネジメントの仕組みを適切に構築できていないと、過剰なコストや時間がかかり、企業のリソースが無駄になるおそれがあります。その結果、企業の市場価値の低下を招く可能性ある点も導入における課題です。
 

今後のサプライチェーンマネジメント(SCM)と深く関わる考え方・技術

サプライチェーンマネジメントを導入する際には、インダストリー4.0への対応、クラウド技術、ブロックチェーン、デジタルツインやAI技術の活用が鍵を握ります。以下で、それぞれの内容と特徴を解説します。
 

インダストリー4.0

インダストリー4.0は、和訳すると「第4次産業革命」と呼ばれ、IT技術やAIなどのテクノロジーにより、バリューチェーンやビジネスモデルの変革を目指す活動をさす用語です。

インダストリー4.0に対応したサプライチェーンマネジメントでは、スマートテクノロジーを活用し、製品開発や必要な原材料の調達、在庫管理、製造ラインの構築などを行います。

「いつ、どのような商品の製造・納品が必要か」という情報を共有できるため、大量生産によるコスト削減とともに、個々の顧客への細やかな対応が可能となる「マスカスタマイゼーション」の実現に役立ちます。
 

クラウド技術

クラウド技術は、サプライチェーンマネジメントを構築する際に、様々なメリットがある技術です。

例えば、製造プロセスのERP(統合基幹業務システム)やMES(製造実行システム)の情報をクラウド技術で共有できれば、リアルタイムな発注や在庫管理が可能になります。

また、クラウド技術を活用したシステムは、本格的な移行を実施しなくても、クラウドベースで必要な部分を導入できる点がメリットです。オンプレミス型のシステムと比較すると、企業の状況に応じて柔軟に対応ができます。
 

ブロックチェーン

ブロックチェーンは、暗号化によるセキュリティ対策が施されたデータを複数のコンピューター上で管理する技術です。情報の信頼性や不変性、トレーサビリティの確保が可能な特徴があり、セキュリティの向上に役立ちます。

サプライチェーンマネジメントで共有される情報には、各企業の重要な機密情報が含まれる場合があります。ブロックチェーンの活用は、サプライチェーンの各プロセスにおける重要な情報を安全かつ効率的に共有する上で有効な手段です。
 

デジタルツインやAI技術

サプライチェーンが複雑化するなか、発注業務の高度化においては、現実空間の情報を仮想空間で再現するデジタルツインや、AI技術の活用が業務効率化の鍵を握っています。

特に、アメリカではサプライチェーン分野でのデジタルツインの活用が増えており、日本企業と比較して先行している状況です。デジタルツインは、生産最適化やリスクシミュレーションにおいても有効な手段として期待されています。
 

サプライチェーンマネジメント(SCM)の強化に向けて

グローバル化や複雑化が進むサプライチェーンの管理では、デジタル技術の活用が欠かせません。

具体的には、デジタル化によるサプライチェーン全体の可視化、データに基づく意思決定、その後の実行力の強化などが挙げられます。

情報のデジタル化が進めば、現在よりもさらに上流・下流のサプライヤーとの情報共有が可能になり、平時の生産性の向上に加え、自然災害発生時など有事における迅速な対応にも役立ちます。

システムやAIの活用による需要予測の高度化や、詳細なデータに基づいた的確な意思決定も、サプライチェーンマネジメントの強化に繋がる重要な要素です。
 

SCMの情報収集なら「SCM -サプライチェーン マネジメント-ワールド」へ

近年、多くの企業でサプライチェーンマネジメントの導入が進められています。企業の競争力を強化し、想定されるリスクに備えるためにも、最新の情報を把握することが重要です。

最新情報を知りたい方は、「サステナブル経営WEEK(旧称:GX経営WEEK)」にご参加ください。サステナブル経営WEEK(旧称:GX経営WEEK)は、持続可能な経営の関連情報が集まる展示会です。

本展では、特別展示企画として「SCM -サプライチェーン マネジメント-ワールド」を開催します。サプライチェーンマネジメントに関する以下のソリューション・サービスが展示されます。

  • SCM最適化・戦略設計
  • ESG・サステナビリティ対応
  • レジリエンス強化(BCP・リスク管理)
  • サイバーセキュリティ対策
  • 金融・保険サービス
  • AI×SCMソリューション
  • 需要予測・生産/調達計画
  • 調達・購買DX
  • 在庫管理・物流最適化

ブースではソリューション・サービスの内容の説明を直接受けられるため、最新の情報や技術の収集に役立ちます。

また、SCM -サプライチェーン マネジメント-ワールドでは、ご出展いただく企業様も募集しています。ご出展いただくと、多くの見込み顧客と出会え、課題に関する技術提案や仕様・設計の相談を通じて具体的な商談を進められます。

企業の経営層やサプライチェーンマネジメント部門などの方々が来場するため、関連するソリューションをお持ちの方は出展もご検討ください。

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サプライチェーンマネジメント(SCM)を導入して効率的な企業活動を

サプライチェーンマネジメントの導入は、脱炭素化の実現をはじめ、在庫の適正な管理やリードタイムの短縮、顧客の利便性向上など、企業に多くのメリットをもたらします。

ただし、現在のサプライチェーンはグローバル化や複雑化が進み、全体を正確に把握して管理するプロセスが容易ではありません。最適化するためには、クラウド技術やブロックチェーンを含むデジタル技術の活用が不可欠です。

こうした背景から、様々な企業がサプライチェーンマネジメントに関するソリューションを提供しており、最新の情報収集には大規模な展示会の活用が有効です。

サステナブル経営WEEK(旧称:GX経営WEEK)の特別展示企画であるSCM -サプライチェーン マネジメント-ワールドでは、戦略設計から在庫管理・物流最適化まで、関連するソリューションが出展されます。

企業経営で重要性が増すサプライチェーンマネジメントの導入に、ぜひ本展示会をご活用ください。

さらに詳しい情報を知りたい方へ
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※「SCM -サプライチェーン マネジメント-ワールド」は、「サステナブル経営WEEK(旧称:GX経営WEEK)」の構成展です。

【出展社・来場者募集中!】
持続可能なサプライチェーン構築のための特別展示企画
「SCM -サプライチェーン マネジメント-ワールド」

▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)

肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授

プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステムの開発、導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」「市村地球環境産業賞」他 資源循環、エネルギーシステムに関する表彰受賞。

その後、経営企画、事業企画等に従事し、技術経営、サプライチェーンマネージメント及び事業継続マネジメント等を推進。

2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて環境経営支援、資源エネルギー技術開発等など社会実証に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 内閣府国土強靭化推進会議 委員他


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