サステナビリティとは?
SDGs・CSRとの違いや企業が取り組むメリット、事例を紹介

サステナビリティとは?SDGs・CSRとの違いや企業が取り組むメリット、事例を紹介

近年、「サステナビリティ」という言葉を日常生活やビジネスシーンで見聞きする機会が増えた方も多いのではないでしょうか。

持続可能な社会の実現に向けた世界共通目標として「SDGs」が知られていますが、サステナビリティも関連性が深いため、理解を深めることが重要です。

本記事では、サステナビリティの概要や企業がサステナビリティ経営に取り組むメリット、日本企業の取り組み事例などを紹介します。


▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)

肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授

プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステムの開発、導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」「市村地球環境産業賞」他 資源循環、エネルギーシステムに関する表彰受賞。

その後、経営企画、事業企画等に従事し、技術経営、サプライチェーンマネージメント及び事業継続マネジメント等を推進。

2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて環境経営支援、資源エネルギー技術開発等など社会実証に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 内閣府国土強靭化推進会議 委員他



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サステナビリティとは

サステナビリティとは、日本語で「持続可能性」と訳され、一般的には自然環境と人間社会が調和した持続可能なシステムを構築することを意味します。

1987年に「環境と開発に関する世界委員会」が出した報告書で、「サステナブル(持続可能性)な発展が人類の課題」として取り上げられたことで広く認知されました。

その範囲は環境のみならず、社会との関わりや経済面での健全性も含まれており、近年では国際的にサステナビリティへの取り組みが行われています。
 

サステナビリティで重要な3つの柱

サステナビリティを考える上で重要な視点として、「環境保護」「社会開発」「経済発展」の3つの柱があります。

英国サステナビリティ社とヴォランズ社の創業者であるジョン・エルキントン氏が提唱したコンセプトであり、それぞれの概要は以下のとおりです。

持続可能な社会を実現するには、上記の3つの要素の調和が重要と考えられています。
 

サステナビリティとSDGsやCSRとの違い    

サステナビリティに関連する用語として、「SDGs」や「CSR」がよく用いられます。以下では、それぞれの意味とサステナビリティとの違いを紹介します。

SDGsとの違い

SDGsとは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことです。2030年までに持続可能でより良い世界を実現するために、社会が抱える様々な問題の解決を目指し、17のゴールと169のターゲットで構成されています。

SDGsの17のゴールは、以下のとおりです。

サステナビリティは持続可能な社会を目指す考え方ですが、SDGsはその具体的な取り組みや目標を示したものです。
 

CSRとの違い

企業の場合、経営者や従業員、取引先、顧客、行政など様々なステークホルダー(利害関係者)が存在します。

CSR(Corporate Social Responsibility)とは、「企業の社会的責任」のことです。企業は社会的な存在であり、自社の利益や経済合理性を追求するだけでなく、ステークホルダー全体の利益を考えた行動が必要であるという考え⽅に基づいています。

かつてのCSRは、企業本来の目的である「利益の追求」とは別に行うものとされ、コストとして捉えられる傾向がありました。

一方、サステナビリティは、利益の追求と同時に社会貢献の達成を実現することを重視する考え方であり、CSRとはこの点において大きく異なります。

企業にサステナビリティ経営が求められる背景

近年、企業にはサステナビリティ経営が求められています。以下で、サステナビリティ経営が求められる背景について解説します。
 

環境問題への認識と地政学リスクの高まり

企業活動では、モノの生産や廃棄が必要です。しかし、生産に必要な資源の枯渇や生産時に生じる温室効果ガス、廃棄物の増加などの影響による気候変動の問題は、企業活動に大きな影響を与え、事業の根幹を揺るがすほどのリスクになる可能性があります。

また、社会面では国際的な人権問題や国際紛争による地政学リスクの高まりなど、予断を許さない状況が続いています。特に、環境問題に対しては1990年代から、国際的な関心が高まっています。

このような背景のなか、企業にはサステナビリティ経営を推進し、長期的な価値の提供が求められています。

ESG投資の広がり

ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の頭文字を組み合わせた言葉です。

近年、国際的に環境問題に対する取り組みへの関心が高まっています。金融業界や投資家の間でも、企業の財務状況だけでなく、ESG指標を考慮した「ESG投資」が広がりを見せています。

金融機関や投資家は、企業のサステナビリティに対する活動実績を重視する傾向が高まっており、サステナビリティを意識した取り組みを行わなければ、資金調達が難しくなる可能性があるでしょう。

新たな国際的なサステナビリティ規制・基準への対応

温室効果ガス排出削減のための政策ツールとして、国際的に「カーボンプライシング」を導入する国や地域が増加しています。

カーボンプライシングとは、企業などが排出するCO2(二酸化炭素)に価格をつけることで、排出者の行動を変化させる政策手法です。

炭素税や排出量取引(ETS)などが代表的な制度で、特にEUは、カーボンプライシングの先進的な制度設計を行っています。

日本では、2023年度よりグリーントランスフォーメーション(GX)を推進する枠組みとしてGXリーグが開始され、同リーグの下で自主的な排出量取引を実施しています。

また、投資家の間でもESGへの関心が高まっており、企業が投資家に対してサステナビリティ関連の情報を開示するための基準が定められています。

国際的な開示基準としては、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が2023年6月に公表した「IFRS S1号」と「IFRS S2号」が代表的なものです。

2024年以降は、世界的にサステナビリティ報告基準を企業に適用する動きが見られています。2024年12月、イギリスはISSB基準と概ね同一の基準を採用する勧告を公表し、カナダでは同年月にISSB基準に整合する開示基準の最終化を発表しています。

国内では、2025年3月5日に日本のサステナビリティ基準委員会(SSBJ)が、ISSBが定めた国際的な基準を取り入れ、読みやすさに重点を置いたSSBJ基準を公表しました。

SSBJ基準は、以下の3つで構成されています。

  • 適用基準:サステナビリティ関連財務開示の基本となる事項
  • 一般基準:サステナビリティ関連のリスク・機会に関する情報の開示すべき事項
  • 気候基準:気候関連のリスクおよび機会に関する情報の開示すべき事項

なお、SSBJ基準を適用する場合は「適用基準」「一般基準」「気候基準」を同時に適用する必要があります。

SSBJ基準に準拠した開示適用義務化については、2027年3月期から徐々に開始される予定です。

カーボンプライシングについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:カーボンプライシングとは?炭素税などの種類から日本の導入状況まで解説

企業がサステナビリティ経営に取り組むメリット

企業がサステナビリティ経営に取り組むメリットは、持続可能な社会の実現に貢献できるだけではありません。以下のように経営面でのメリットも享受できます。

  • 企業イメージの向上に繋がる
  • 新たなビジネスチャンスに繋がる可能性がある
  • 資金を調達しやすくなる可能性がある

それぞれ解説します。
 

企業イメージの向上に繋がる

内閣府の世論調査によると、環境問題に関心のある方は約90%でした※1。サステナビリティ経営に取り組むことで、環境問題に関心のある層にアプローチでき、企業イメージが高まる可能性があります。

また、近年は、業界を問わず人手不足が深刻な問題です。しかし、サステナビリティ経営に取り組むことで、環境問題への意識が高い学生に選んで貰える可能性があるため、優秀な人材の採用に繋がる可能性があります。

株式会社日本総合研究所が行ったキャリアに対する意識調査では、大学生の50%以上が環境問題に取り組む企業への就職を希望しているというデータもあります※2。

※1出典:内閣府「世論調査」
※2出典:日本総研「若者の意識調査(報告) ― ESGおよびSDGs、キャリア等に対する意識 ―」

新たなビジネスチャンスに繋がる可能性がある

サステナビリティ経営に取り組むことで、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性があります。

ビジネスと持続可能な開発委員会(Business & Sustainable Development Commission)の報告書によると、SDGsを含めたサステナビリティ関連の取り組みには、少なくとも年間12兆ドルの市場機会の価値があるとされています※。

サステナビリティ経営というと大企業の取り組みをイメージするかもしれません。しかし、日本企業はサステナビリティ関連の技術開発に強い傾向があり、中小企業にもとっても大きなビジネスチャンスがあります。

また、自社の製品をサステナビリティ分野に活かすだけでなく、サステナビリティへの関心が高い大企業から選ばれる企業となることで、自社の業績向上につながる可能性があります。

※出典:WBCSD「持続可能な開発目標 CEO向けガイド」

資金を調達しやすくなる可能性がある

前述のとおり、近年はESG投資が主流になってきており、投資先を選択する際にESGが重視される傾向です。

環境保護や社会問題に配慮してサステナビリティに力を入れることで、金融機関や投資家から選ばれる企業となる可能性が高まり、資金調達で有利になると考えられます。
 

サステナビリティ経営を目指す際に有効な「GRIスタンダード」

サステナビリティ経営によるメリットを享受するためには、その取り組みを外部に報告・公開することが重要です。

しかし、サステナビリティの範囲は広く、どのように報告すべきか判断することは容易ではありません。そこで、世界的にサステナビリティの報告書を作成する際に活用されているのが「GRIスタンダード」です。

GRIスタンダードとは、GRI(Global Reporting Initiative)が策定したサステナビリティ情報の開示基準です。

共通スタンダードと項目別スタンダードの他に、2021年10月から順次公表されているセクター別スタンダードの3つから構成されています。

なお、共通スタンダードは、全ての組織がサステナビリティ報告書を作成する際に適用される基準です。その上で、自社の事業内容や特性に応じて、項目別のスタンダードおよびセクター別のスタンダードのなかから該当するものを選択しましょう。
 

サステナビリティ経営に取り組む日本企業の事例

サステナビリティ経営に取り組む企業は、多数存在します。以下では、サステナビリティ経営に取り組む日本企業の事例を紹介します。
 

株式会社NTTドコモ

株式会社NTTドコモが属するNTTグループでは、「NTT グループサステナビリティ憲章」を制定しており、「企業としての成長」と「社会課題の解決」を両立し、「持続可能な社会」を実現する取り組みを推進しています。

株式会社NTTドコモでは、以下の調達基本方針に基づいた調達を実施する旨を発表しています

環境保全の取り組みとして、2022年11月に制定された「NTTドコモ グリーン調達基準」に基づき、地球環境保全に配慮した調達活動を推進しています。この基準では、安全かつ環境負荷の少ない原料・部品・製品を積極的に調達するグリーン調達を行っています。

※出典:NTTドコモ「NTTドコモ サプライチェーン サステナビリティ推進ガイドライン」

株式会社セブン&アイ・ホールディングス

世界中から多くの原材料などを調達している株式会社セブン&アイ・ホールディングスでは、「持続可能な原則・方針」に則り、持続可能な調達の推進に取り組んでいます。

この方針の基、ステークホルダーとともに人権の尊重や環境保全に配慮した調達活動を進めており、その進捗状況を開示することで透明性の高い取り組みを実現しています

持続可能な原則は以下の6つです

例えば、人権の尊重では、「非人道的な扱いの禁止」や「強制労働の禁止」などの計9つの項目に対して重点的に取り組んでいます。

また、環境・生物多様性保全と課題への対応では、「生物多様性の保全に努め、自然資源枯渇防止と、自然の回復力のなかで自然資本が有効に活用される、人と自然環境が調和した自然共生社会の実現を目指す」など、計6つの方針が定められています。

その他、農産物や畜産物など分野別の方針を定め、サステナビリティ経営に取り組んでいます。

※出典:株式会社セブン&アイ・ホールディングス「セブン&アイグループ持続可能な調達原則・方針」

サステナビリティ経営に取り組む海外企業の事例

サステナビリティ経営の取り組みは、海外のほうが進んでいる傾向があります。以下では、サステナビリティ経営に取り組む海外企業の事例を紹介します。

Apple Inc.

Apple Inc.(以下、Apple)は、アメリカに本社を構えるIT企業です。iPhoneやApple Watch、MacBookなどの電化製品の製造・販売をしており、多くの人に認知されています。

Appleでは、すでに温室効果ガスの排出においてカーボンニュートラルを達成しています。しかし、それだけに留まらず、2030年までに販売される全てのApple製デバイスで100%カーボンニュートラルの達成を目標に掲げています※。

Appleは、アリゾナ州・オレゴン州・イリノイ州での新規および既存の電力プロジェクトを通じて、1GW以上の再生可能エネルギーを調達に成功しました。これは、一般家庭の15万世帯分以上の年間消費電力量に相当します。

また、Appleが自社施設向けに調達している再生可能エネルギーの80%以上は、同社が主導した電力プロジェクトによって生み出されており、地域コミュニティや他の企業にも恩恵をもたらしています。

※出典:Apple Inc.「Apple、2030年までにサプライチェーンの100%カーボンニュートラル達成を約束」

パタゴニア・インターナショナル・インク

パタゴニア・インターナショナル・インク(以下、パタゴニア)は、アメリカに本社を構えるアウトドアブランドです。パタゴニアは環境保全と持続可能性に対して、長年にわたり取り組んでいます。

例えば、パタゴニアの製品の99%には、リサイクルポリエステルやリサイクルナイロンなど、何らかの環境に配慮した素材が使用されており、石油使用量や温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます※。

また、自社経営の施設では、100%再生可能エネルギーを使用することを目指す取り組みを行うなど、特に環境保全への取り組みに注力しています。

※出典:パタゴニア・インターナショナル・インク「環境的責任」
 

Ørsted A/S

Ørsted A/S(以下、オーステッド)は、デンマークに本社を構えるガス・石油開発事業のために設立された国営企業です。

オーステッドでは、2008年まで発電および発熱の85%を化石燃料に頼っていました。しかし、脱炭素化に向けて再生可能エネルギーへの転換を行い、2019年には供給エネルギーの82%を再生可能エネルギーに変更しました。

現在も取り組みは継続されており、再生可能エネルギーソリューションの需要を促進しながら、2040年までに全ての温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指しています※。

また、再生可能エネルギーの拡大には陸地と海域へのアクセスが不可欠という観点から、生物多様性の保護にも取り組んでいます。2030年以降に開始する全ての新規再生可能エネルギープロジェクトで、生物多様性へのネットプラス(差し引きプラス)の影響を実現することを発表しています。

※出典:Ørsted A/S「脱炭素化」

サステナビリティ経営の最新情報を知るなら「サステナブル経営WEEK」へ

近年、企業にはサステナビリティ経営が求められています。サステナビリティ経営の最新情報を知りたい方は「サステナブル経営WEEK(旧称:GX経営WEEK)」にご来場ください。

サステナブル経営WEEK(旧称:GX経営WEEK)は、企業のサステナビリティ経営を実現するための日本最大の展示会で、企業向け脱炭素ソリューションやサーキュラー・エコノミー、サプライチェーンマネジメントに関連する製品が出展します。

「サステナブル経営 WEEK」は、「脱炭素経営 EXPO」と「サーキュラー・エコノミーEXPO」から構成されています。

「脱炭素経営 EXPO」は、脱炭素経営を実現するための日本最大級の専門展です。一方、「サーキュラー・エコノミーEXPO」は、サーキュラー・エコノミー型の企業経営を実現するための日本唯一の専門展です。

それぞれの展示会では、以下のメーカーや商社などが出展社として参加します。

本展示会は、経営層、サステナビリティ推進部門、サプライチェーンマネジメント部門が来場する商談展です。来場者はサステナビリティ経営に関連する技術や製品を実際に体験し、出展社に相談が可能です。

また、本展示会では出展社も受け付けており、出展社にとっては新たな顧客獲得のチャンスに繋がります。

来場者、出展社双方にメリットのある展示会のため、ぜひご参加ください。

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サステナビリティ経営を取り入れて選ばれる企業へ

サステナビリティは、一般的に自然環境と人間社会が調和した持続可能なシステムを構築することを意味します。

サステナビリティの考え方は世界的に広まっており、企業にとってサステナビリティ経営への取り組みは、今後不可欠なものになると予想されます。

サステナビリティ経営の情報を知るなら、大規模展示会への参加がおすすめです。「サステナブル経営WEEK(旧称:GX経営WEEK)」は、日本最大のサステナビリティ経営実現のための展示会です。ぜひご来場ください。

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※「脱炭素経営 EXPO」「サーキュラー・エコノミー EXPO」は、「サステナブル経営WEEK(旧称:GX経営WEEK)」の構成展です。

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「サステナブル経営WEEK(旧称:GX経営WEEK)」

▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)

肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授

プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステムの開発、導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」「市村地球環境産業賞」他 資源循環、エネルギーシステムに関する表彰受賞。

その後、経営企画、事業企画等に従事し、技術経営、サプライチェーンマネージメント及び事業継続マネジメント等を推進。

2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて環境経営支援、資源エネルギー技術開発等など社会実証に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 内閣府国土強靭化推進会議 委員他


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