グリーンデータセンターとは？
求められる背景や企業による取り組み事例を紹介

グリーンデータセンターとは、エネルギー効率を最適化し、環境への影響を最小限に抑えたデータセンター（データの蓄積と処理を行い、ITインフラを安全かつ効率的に運用するための施設）のことです。

近年、自然資源や生態系などの地球環境に配慮し、持続可能な社会の実現を目指すグリーン化が業界を問わず進んでおり、データセンターも例外ではありません。

パソコンやスマホなどの電子機器の普及、AIの利用拡大並びに、企業のDX推進により、情報処理に必要なサーバー群やその処理量は増加の一途をたどっています。

これにより、サーバーやそれらを冷却するための空調に使用される電力量も増加しており、データセンターのグリーン化の重要性が高まっています。

データセンターの物理インフラの電力効率を示す指標のひとつに「PUE（Power Usage Effectiveness）」があります。

PUEは、設備全体の消費電力をIT機器の消費電力で割ったものです。データセンターの指標として国際的に広く普及しており、PUEの値が低いほどエネルギー効率が高く、省エネ性能が高いことを意味します。

経済産業省では、2030年までにデータセンター業ベンチマーク制度でPUE1.4を目標としています※1。そのため、データセンターのグリーン化を目指すための基準として、PUE1.4がひとつの目安といえます。

なお、従来のデータセンターでは、PUE2～PUE3程度でしたが、経済産業省の2022年度アンケート調査では、上位15%の事業者がPUE1.4の水準を満たしています※2。

※1出典：株式会社野村総合研究所「令和4年度エネルギー需給構造高度化対策に関する調査等事業」
※2出典：資源エネルギー庁「ベンチマーク制度 令和3年度見直し事項の概要」
 

データセンターの重要性は、デジタル化が進むほど高まります。昨今、AIの普及の影響もあり、データセンターは増加中です。

IEA（国際エネルギー機関）によると、世界全体のデータセンターの電力消費量は約415テラワットアワー（TWh）で、これは2024年の電力消費量の約1.5%に相当します。過去5年間で約12%増加している現状です※1。

日本でも、デジタル化の進展やAIの普及によってデータセンターの電力消費量は増加しており、2034年には2025年度比で約13倍になると予想されています※2。

一方で、日本では「2050カーボンニュートラル」を宣言し、「グリーン成長戦略」には以下のようなデータセンターの目標を掲げています※3。

• 2030年までに全ての新設データセンターを30%省エネ化する
  
• 2040年までにデータセンターのカーボンニュートラルを目指す

また、経済産業省も「次世代デジタルインフラの構築」プロジェクトの一環として、2030年までにデータセンターの40%以上の省エネ化を後押ししています※4。

このような背景から、データセンターのグリーン化が求められており、注目が集まっています。

※1出典：日本貿易振興機構「欧州でのAIの発展におけるデータセンター動向とエネルギー状況」
※2出典：独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構「AIの普及により電力需要が急増！電力不足を防ぐ取り組みを解説」
※3出典：経済産業省「2050 年カーボンニュートラルに伴う グリーン成長戦略」
※4出典：経済産業省『「次世代デジタルインフラの構築」プロジェクトに関する研究開発・社会実装計画（案）の概要』
 

データセンターのグリーン化を進めるためには、サーバー本体の消費電力やサーバー空調の消費動力の省エネ化・高効率化に加え、脱炭素電源の活用が不可欠です。

特に、近年の各データセンターでは以下のような様々な取り組みを行っています。

• 局所空調システムの導入
  
• 自然エネルギーを活用した冷却システムの活用
  
• 液浸冷却の導入
  
• 再生可能エネルギーの活用

それぞれ解説します。
 

従来のデータセンターでは、サーバールームにサーバーやネットワーク機器を設置するラックを整然と並べ、その周辺に空調機を分散配置する方式が主流でした。しかし、空調吸気と空調還気による熱ロスの発生などから大量のエネルギーが必要でした。

グリーンデータセンターでは、この問題点を解決するために以下のような局所空調システムが導入されています。

※出典：電気設備学会「データセンタにおける 環境配慮技術」

従来のデータセンターでは、サーバーの冷却システムを電力のみに頼っていました。

しかし、グリーンデータセンターでは低温の外気を利用し、エネルギー削減を実現している事例があります。例えば、外気冷房方式や寒冷地型データセンターが挙げられます。

なお、日本でも青森県の冷涼な気候を活用した寒冷地型データセンターが存在します。
 

液浸冷却は、サーバーを冷却オイルに直接浸して冷却するシステムです。機器の冷却効率が高く、冷却オイルは非導電性のため、サーバーの電子回路に悪影響を及ぼさないことが特徴です。

液浸冷却を活用すれば、従来の冷却システムに比べて空調コストを抑えられるだけでなく、冷たい空気を循環させる必要がないため、設置面積も小さくなります。
 

空調システムや冷却システムによって省エネ化を進めても、削減しきれないエネルギーに関しては、再生可能エネルギーによるカーボンニュートラル化が不可欠です。

セキュリティの観点から、データセンターは外壁に窓が少ない構造が多いため、太陽光発電装置を設置し、太陽光エネルギーを活用することが有効だと考えられています。また、屋上やエントランスに風力発電装置を設置する事例もあります。
 

グリーンデータセンターのメリットは以下のとおりです。

• コストの削減につながる
  
• 環境負荷を軽減できる
  
• 企業のイメージアップにつながる

それぞれ解説します。
 

データセンターのグリーン化によって、効率の高い空調システムや冷却システムを導入すれば、電力消費量を抑えられます。そのため、従来のデータセンターに比べて長期的な維持コストの削減につながるでしょう。

なお、データセンターのグリーン化には設備を整えるためのコストが必要ですが、関連する補助金などの政府支援を受けられる可能性があります。
 

データセンターのグリーン化には、エネルギー効率の向上や再生可能エネルギーの活用が不可欠です。その結果、温室効果ガスの排出量を大幅に削減でき、環境負荷を軽減する効果が期待できます。
 

データセンターのグリーン化は、消費者や関係企業に対して環境に配慮していることをアピールできるため、企業イメージの向上につながる可能性があります。

また、近年は企業の財務状況のみならず、非財務情報を考慮するESG投資に金融機関や投資家が注目しています。データセンターのグリーン化によって、金融機関や投資家へのアピールにもつながるため、資金調達の面でも有利になるでしょう。

グリーンデータセンターの実現に向けた取り組みは、すでに国内外の様々な企業が行っています。以下では、グリーンデータセンターの実現に向けた国内外の企業の取り組み事例を紹介します。
 

2018年、マイクロソフトは水深36メートルの地点にデータセンターを設置し、その信頼性やパフォーマンスを評価した上で、2020年に引き上げを行いました※。

この実験では、陸上と比較して故障率が低いなどの有用な成果が得られており、今後の新たな研究プラットフォームに活用していく予定です。なお、海底データセンターのプロジェクト自体は、2024年に終了しました。

※出典：Microsoft Corporation「マイクロソフト、海底データセンターの信頼性、実用性、エネルギー消費の持続可能性を実証」

2022年、株式会社NTTデータは三鷹データセンターEASTで、協力企業9社と実機による液浸冷却システムの実証実験を実施しました。

液体を沸騰させて気化熱を冷却に活用する「二相式」が採用されたこの実験では、高い冷却効果を省エネルギー（従来よりも冷却エネルギーを97%削減）で実現することに成功し、PUEの推定値は1.07とされています。

また、株式会社NTTデータは、2025年度中に三鷹データセンターEASTの使用電力を実質的な再生可能エネルギーに100%転換することも発表しています※。

※出典：株式会社NTTデータ「生グリーン電力の一部活用により、三鷹データセンターEASTの電力を実質再エネ100％に転換、顧客の再エネ利用も可能に」

日本郵船株式会社は、株式会社NTTファシリティーズ、株式会社ユーラスエナジーホールディングス、株式会社三菱ＵＦＪ銀行、横浜市と協力し、災害対策用のミニフロートを活用したグリーンデータセンターの実証実験を2025年の秋から開始することを発表しました※。

今回の実験では、ミニフロート上にコンテナ型データセンター、太陽光発電設備および蓄電池設備を設置し、再生可能エネルギー100%で稼働するデータセンターとして、洋上で各設備の塩害耐性や稼働安定性を確認するとしています。

※出典：日本郵船株式会社「再生可能エネルギーを100%活用する洋上データセンター実現に向けた実証実験に関する覚書を締結」

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、グリーンデータセンターの促進など、様々な取り組みが行われています。

また、電力に関しては、ITを活用した需給調整を実現するスマートグリッドもカギを握っており、最新の動向を把握することが大切です。

グリーンデータセンターやスマートグリッドに関する情報収集には、「SMART GRID EXPOスマートグリッド展」をご活用ください。

「SMART GRID EXPOスマートグリッド展」は、エネルギーマネジメントやDR（デマンドレスポンス）、需給管理システムをはじめ、スマートグリッドに関連する多くの製品・技術が出展される展示会で、世界中から専門家が来場します。

本展はface to faceの商談会となっており、電力ビジネスを加速させる重要なプラットフォームとして業界に定着しています。

来場者は最新の技術や製品を直接体験可能です。一方、出展社にとっては新たなビジネスチャンスにつながります。出展社も受け付けているため、関連企業様はぜひご参加ください。

■SMART GRID EXPOスマートグリッド展の詳細はこちら
 

近年、デジタル化の進展やAIの普及によってデータセンターの重要性が拡大しており、世界的にデータセンターのグリーン化が進められています。

また、電力の需給調整にはスマートグリッドもカギとなります。電力業界の最新情報を知るなら、大規模な展示会への参加がおすすめです。

「SMART GRID EXPOスマートグリッド展」は、世界各国から専門家が来場する展示会のため、関連分野の動向や情報収集にぜひご活用ください。

さらに詳しい情報を知りたい方へ
資料請求はこちら

※「SMART GRID EXPOスマートグリッド展」は、「SMART ENERGY WEEK -スマートエネルギーWeek-」の構成展です。