太陽光パネルリサイクルの今後は?大量廃棄が予想される2030年代への課題も解説

現在、太陽光・風力・水力など、地球資源を利用した再生可能エネルギーが注目を集めています。国土が狭く、エネルギー自給率が低い日本にとって、再生可能エネルギーのなかでも特に太陽光発電は重要な発電方法です。

発電に使用する太陽光パネルの寿命は、一般的に25~30年といわれています。寿命を迎えたら産業廃棄物としての処理、または適切なリサイクルが必要です。

本記事では、太陽光パネルをリサイクルする仕組みや費用、課題などを解説します。国内外のリサイクル事例や、太陽光発電に関わる製品・技術が一堂に会する展示会も紹介するので、ぜひご一読ください。

 

日本に太陽光パネル・太陽光発電が普及した背景

太陽光パネルは、金属に光があたると電子が放出される光電効果を利用した発電システムです。太陽光をエネルギーとして発電するため、発電時に大気汚染物質が発生しません。一般住宅の屋根や広大な土地のメガソーラーなど、設置場所に応じて柔軟に対応できる点も特徴です。

日本国内では、再生可能エネルギーによる発電の割合が増加しています。特に太陽光発電は、2022年度末時点での国内累積導入量が約8,500万kWに到達し、世界第3位の導入量を誇ります。

もともと日本は資源が乏しく、エネルギー自給率が低い国です。令和4年のエネルギー自給率は12.6%と、OECD(経済協力開発機構)加盟国で下位に留まっています。加えて、島国なので、ヨーロッパ諸国のように隣国との電気のやり取りが容易ではありません。

その点、太陽光発電であれば諸外国から燃料を輸入する必要がなく、国内で発電が可能です。こうした背景から、燃料の輸入に頼らず自国で生産できる太陽光発電の普及が進みました。

また、太陽光発電は、エネルギーや地球環境に関する諸問題への対策として有効です。災害時の非常用電源としての活用や、発電した電気の売電収入による経済的メリットの面でも注目されています。

 

日本の太陽光発電普及拡大の歴史

太陽光発電の普及拡大は、次のとおりに進んできました。

太陽光発電は、電卓や腕時計など身近な用途でも利用されていましたが、住宅用の太陽光発電設備が登場した当初は、現在より高額な設置費用が必要でした。2000年代には生産効率と性能が向上し、2009年の補助金制度再開もあって導入量が急増した歴史があります。

そして、FIT制度・FIP制度の開始など、政府による再生可能エネルギーの推進の動きも後押しして、導入量が順調に増加しています。

 

2030年代に予想される太陽光パネルの大量廃棄

前述のとおり、太陽光発電は2000年代に急速に普及しました。一般的な太陽光パネルの寿命は25~30年です。つまり、2000年代に設置された太陽光パネルは、2030年代に寿命を迎えます。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(共同研究先:みずほ情報総研株式会社)※の推計では、最も多くの太陽光パネルが寿命を迎えるのは2034~2036年です。この時期に排出される使用済み太陽光パネルは、約17~28万トン/年にのぼると予測されています。

使用済み太陽光パネルは産業廃棄物として扱われ、廃棄処分の際は最終処分場に埋め立てられます。上述のように大量の太陽光パネルが埋め立てられれば、最終処分場の寿命が逼迫する可能性は高いでしょう。

現在は2015年のパリ協定採択を受け、世界の多くの国が「2050年カーボンニュートラル」を目指す状況です。発電時に温室効果ガスを排出しない太陽光発電は、カーボンニュートラル社会の実現に欠かせません。

しかし、太陽光パネルの大量廃棄が想定される状態では、導入促進は困難です。2030年代に向け、リサイクル技術を確立・普及する必要があります。

※出典:国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(共同研究先:みずほ情報総研株式会社)「太陽光発電リサイクルに関する動向および評価手法の調査(事後評価)」

 

太陽光パネルのリサイクルはできない?課題を解説

従来、「太陽光パネルはリサイクルできない」「難しい」といわれてきました。主な理由は次の3つです。

  • 有害物質の処理方法が確立していない
  • リユース・リサイクルの制度が整っていない
  • 技術の実用化・用途の開拓が求められる

3つの理由を軸に、太陽光パネルのリサイクル促進が抱える課題を解説します。

有害物質の処理方法が確立していない

太陽光パネルの種類によっては、有害物質である鉛・カドミウム・ヒ素・セレンなどが含まれる場合があります。有害物質の情報が正しく廃棄物処理業者に伝わらなかった場合、誤った処理が行われる可能性があるのは懸念点です。

こうした事態を避けるため、適切に情報が提供できるよう、JPEAは「使用済太陽電池モジュールの適正処理に資する情報提供のガイドライン」を策定しました。

このガイドラインは、太陽光パネルメーカーや輸入事業者に対して適切な情報提供のあり方を示し、積極的な情報開示を求めるものです。今後も、有害物質の情報を入手しやすくなる仕組み作りや、事業者が正しく有害物質を処理できる環境の整備が必要です。

なお、太陽光パネルは産業廃棄物の品目のうち「金属くず」や「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」など、複数の種類に該当します。処分の際は、全ての処理許可を取得している事業者に依頼しなければなりません。

不法投棄など法律に反する方法で廃棄したり、許可を得ていない事業者に依頼したりすると、罰則が科せられる場合があります。

リユース・リサイクルの制度が整っていない

現在、太陽光パネルリサイクルのガイドラインは策定されていますが、法律で明確化されているわけではありません。情報の一元化と管理・活用ができておらず、処理やリサイクルの実態がわかりにくい点は課題です。

ルールが整備されていない状況もあり、各素材がリサイクルできるのか適正な処分ができるのかの判断は各事業者に委ねられている現状があります。

その点、EU各国やアメリカの一部の州では、太陽光パネル処理に関する規制が進んでいます。EUでは2012年のWEEE指令により、使用済み太陽光パネルの回収・リサイクルが義務化されました。

こうした諸外国を参考に、日本でも適切な回収・リサイクル制度の整備が求められます。

技術の実用化・用途の開拓が求められる

使用済み太陽光パネルは、現在の技術だとリサイクルよりも費用がかからない廃棄処分に回される傾向があります。リサイクルを促進するためには、より低コストかつ高リサイクル率を実現できる技術の普及が求められます。

技術面の課題の例として挙げられるのは、セル・EVAとガラスの分離です。太陽光パネルは、長期にわたる屋外での発電に耐える強固な構造のため、セル・EVAをガラスから引き剥がすのは難しい工程だとされています。効率的なリサイクルには、セル・EVAとガラスを分離しやすい太陽光パネルの開発や、分離技術の確立が必要です。

また、太陽光パネルの重量のうち約6割を占めるガラスの再利用先の開拓も、課題のひとつです。現在、路盤材・発泡ガラスに加え、コンクリート骨材や板ガラスへのリサイクルも実証・検討されています。

 

太陽光パネルをリサイクルする仕組み

現在、流通している太陽光パネルの主な種類として、シリコン系と化合物系があります。それぞれのリサイクル方法を解説します。
 

シリコン系太陽光パネルのリサイクル

日本の太陽光パネルのうち、約95%を占めるのがシリコン系太陽光パネルです。リサイクル工程では主に次の4つに分解された後、それぞれ処理されます。

アルミフレーム・ジャンクションボックスは取り外しが簡単である一方、封止材からガラスを分離するのは大変難しいとされています。

なお、2022年にはドイツで太陽光パネルのシリコンをリサイクルする技術が完成しました。この技術が普及すれば、シリコン系太陽光パネルのリサイクル率が上がるかもしれません。

化合物系太陽光パネルのリサイクル

国内での導入量が5%未満の化合物系太陽光パネルは、シリコン系と比べて適切な処理方法が普及していません。そのため、化合物系太陽光パネルのリサイクル処理を受け付けていない事業者も存在します。

セルの半導体に複数の物質を使っている構造上、含有物質の種類や割合がわからなければ処理が困難です。分析コストもかかるため、含有物質の情報がない化合物系太陽光パネルの持ち込みを断るケースがあります。

また、シリコン系、化合物系を問わず、多くのカバーガラスに含まれるアンチモンは、再利用が難しいとされています。今後、含有成分のより詳細な実態把握と、再利用後の用途の検討が必要です。

 

国内外で進む太陽光パネルリサイクルへの取り組み

太陽光パネルの大量廃棄が見込まれる2030年代に向けて、国内外で太陽光パネルのリサイクルに取り組む企業や自治体が少しずつ増えています。以下では、日本と海外の事例を紹介します。
 

日本の事例

福岡県※1では、令和3年から「廃棄太陽光パネルスマート回収支援システム」の運用を開始しました。各地に点在する廃棄パネルの情報をクラウド上で共有し、効率よく回収・リサイクルするシステムです。

システムに登録するのは、メンテナンス・収集運搬・リサイクルを担う各事業者です。メンテナンス業者は収集・リサイクルの手配を一元化でき、収集業者は効率的な回収ルートがわかるなど、多方面にメリットがあります。

また、以下の5社※2では2024年から、使用済み太陽光パネルのリユース・リサイクル事業に向けた実証実験への取り組みを開始しました。

  • 住友商事株式会社
  • 三井住友ファイナンス&リース株式会社
  • SMFLみらいパートナーズ株式会社
  • 株式会社アビヅ
  • 株式会社SMART

主な実証実験の内容は、「サプライチェーン構築のために必要となる使用済太陽光パネルの確保」と「リユース・リサイクルされた太陽光パネルの販路確立」です。

5社は、廃棄パネルの排出がピークを迎える2030年代までの持続可能なサプライチェーンの構築を目標に掲げています。

※1出典:福岡県「廃棄太陽光パネルスマート回収システムについて」
※2出典:住友商事株式会社「太陽光パネルのリユース・リサイクル事業の実現に向けて、実証実験を開始~太陽光パネルの持続可能なサプライチェーン構築を目指す~」

海外の事例

ヨーロッパでは2007年、使用済み太陽電池モジュールのリサイクルシステム構築を目的とする非営利団体PV CYCLEが設立されました。

PV CYCLEは欧州太陽光発電協会・ドイツソーラー産業協会・太陽光パネルメーカー6社からなり、ベルギーに本部を置いています。加盟企業から徴収した会費で運営され、設備回収から処理までを担う団体です。

PV CYCLE では2010年のシステム運用開始から約5年間で、ヨーロッパ全域から13,000トン以上の太陽光パネルを回収した実績があります。2012年のWEEE指令改正以降は、製造者が各国の国内法を遵守するためのサポートも行っています。

また、太陽光発電のリサイクル支援が進むのは、アメリカでも同様です。エネルギー省(DOE)は2023年3月、太陽光パネルのリサイクルを担うSolarcycle社に補助金150万ドルを提供しました。2035年までの政府目標「電力部門のCO2(二酸化炭素)排出量ゼロ」の達成が狙いです。

そして、Solarcycle社は同年5月に、世界的な発電企業AES Corp.とリサイクルサービス契約を締結しました。両社で協力し、使用済み太陽光パネルのリサイクルに取り組んでいます。

2024年には使用済み太陽光パネルからソーラーガラスを製造する工場の建設も発表され、2026年の稼働を目指しています。

 

太陽光パネルの廃棄やリサイクルに関連する費用・制度

使用済み太陽光パネルは産業廃棄物としての処理、または適切なリサイクルが必要です。太陽光パネルの廃棄費用や関連する積立制度、処理事業者への補助金制度を解説します。
 

太陽光発電設備の廃棄等費⽤積⽴制度

2022年7月から、発電事業者に対して太陽光発電の廃棄・撤去費用の積立が義務化されました。将来的な発電設備の不法投棄を防ぐため、10kW以上でFIT・FIP認定を受けた全ての太陽光発電事業を対象とする制度です。

太陽光パネルの廃棄費用は、主に撤去・運搬・処分のためにかかります。経済産業省によると、標準的な太陽光発電設備の廃棄費用の目安※は次のとおりです。

このとおり、太陽光パネルの廃棄費用は決して安くありません。そのため、処分に備えて事前に積み立てを行い、正しい廃棄を目指します。

※出典:経済産業省 資源エネルギー庁「太陽光発電設備の廃棄等について」

リサイクル事業者への補助金・助成制度

太陽光パネルのリサイクルを行う事業者向けの補助金制度も登場しました。

まず挙げられるのが、公益財団法人廃棄物・3R研究財団の実施制度です。同財団では、太陽光パネルリサイクル設備導入事業に対して補助を行っています(令和5年度の公募は終了)。

対象となるのは、太陽光パネルのガラスやセル、フレームの分離設備を日本国内の事業所に導入する事業です。再生可能エネルギーの主力化に向け、プロセス全体の脱炭素化を目指しています。

また、東京都は「使用済住宅用太陽光パネルリサイクル費用補助事業」で、産業廃棄物中間処理事業者に補助金を提供しています。東京都の指定を受けた事業者に向け、リサイクル処理する太陽光パネルの発電出力(kW)に25,000円を乗じた額を補助する事業です。

この他、例えば福岡県や宮崎県など、都道府県単位で補助金を設けている自治体もあります。

 

太陽光パネルリサイクルの最新情報を得たいなら「PV EXPO 太陽光発電展」へ

太陽光パネルのリサイクルは、まだ制度が完全には整っていません。今後の技術開発・研究によって状況は変わるため、最新情報の収集が大切です。

太陽光パネルリサイクルのヒントを得るなら、太陽光発電に関わるメーカーや導入を検討する企業が一堂に会する「PV EXPO 太陽光発電展」へぜひご来場ください。展示会へご来場いただくと、太陽光パネルが抱える問題や疑問を解消するヒントが得られる可能性があります。

同展示会には、太陽光発電関連の製品・サービスを展開する企業様や、様々な技術を持つメーカー様が多数出展いたします。例えば、過去には「低温熱分解法による廃太陽光パネルの高度リサイクル処理技術(株式会社トクヤマ)」が出展されました。

会場では、製品・技術を確認の上、その場で出展企業様から技術提案を受けたり、仕様設計・見積もりを相談したりできます。

また、太陽光パネルリサイクルに関わる製品・技術を展開する企業様の場合は、ぜひ当展示会へ出展者としての参加もご検討ください。

多様なご来場者様から対面で聞いたリアルな要望から、今後の事業へのヒントが得られる可能性があります。さらに、展示会での出会いによって、新たな事業展開が生まれるかもしれません。

「PV EXPO 太陽光発電展」は東京で春・秋の2回、大阪で1回開催されています。ぜひ参加をご検討ください。

■PV EXPO 太陽光発電展
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太陽光パネルのリサイクルでサステナブルな発電事業を

太陽光パネルのリサイクルには依然として課題が多いものの、続々と新たな技術が誕生しています。大量廃棄がピークを迎える2030年代に向けて、政府も動きはじめました。

クリーンエネルギーとして太陽光発電を取り入れても、20年後・30年後に使い捨てるならサステナブルとはいえません。太陽光発電設備を導入する時は、使用後の処理・リサイクルにも十分な検討が必要です。

サステナブルな太陽光発電の導入を目指すなら、ぜひ「PV EXPO 太陽光発電展」にご参加ください。

さらに詳しい情報を知りたい方へ
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※「PV EXPO太陽光発電展」は、「スマートエネルギーWeek(SMART ENERGY WEEK)」の構成展です。

 

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▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、サーマルリサイクル技術に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他