デジタル発電所(DPP)とは?IoTやAIを活用した火力発電所の新しい形態を紹介
2023年4月、日本最大の発電会社である株式会社JERAは、自社が運営する姉崎火力発電所にデジタル発電所(DPP)を導入したことを発表しました※。
この発表によってデジタル発電所に注目が集まっています。デジタル発電所は、新しい形態の発電所のため、運用形態や導入による効果が気になる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、デジタル発電所に関する基礎知識や導入によって期待できる効果を紹介します。デジタル発電所で活用されている技術を例に、今後の電力産業で必要となる技術に関しても解説するので、ぜひご一読ください。
▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、サーマルリサイクル技術に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他
目次
- デジタル発電所(DPP)とは
- デジタル発電所が注目される背景
- デジタル発電所への移行で期待される効果
- デジタル発電所から見える電力事業に必要な技術
- 火力発電ビジネスを加速させるなら「ZERO-E THERMAL EXPOゼロエミッション火力発電EXPO」へ
- デジタル発電所でも活用されるIoTやAIを導入してビジネスの発展を
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デジタル発電所(DPP)とは
デジタル発電所とは、発電所内のオペレーションや性能管理、設備のメンテナンスなどの様々な業務に関してIoTやAIを活用し、データとして取得する発電所のことです。
デジタル発電所の導入によって「発電所の設備と人の仕事」を標準化し、デジタル化が可能になります。
国内初のデジタル発電所の取り組みは、東京電力と中部電力が出資する「株式会社JERA(ジェラ)」が行っています。株式会社JERAは国内26ヶ所の火力発電所を持ち、国内の発電力の3割をカバーしている日本最大の発電会社です。
株式会社JERAのデジタル発電所は、以下の2つの仕組みを柱としています。
- アプリケーションを組み合わせたパッケージ化
- AIとメタバースによる24時間、リアルタイムの管理体制
アプリケーションのパッケージ化は、すでに姉崎火力発電所や武豊火力発電所などで導入されており、今後の運用効果やさらなる導入拡大が注目されています。
デジタル発電所が注目される背景
東日本大震災や原子力発電事故を契機に、電力産業では分散型電源や再生可能エネルギーなどの多様な電力システムの活用が求められており、改革が進んでいます。また、省エネ設備の普及や人口減少などにより、国内の電⼒需要は頭打ちになっている状況です。
一方で、送配電分野を中⼼に⽼朽化した設備の更新とさらなる効率的な運⽤が求められていることから、電⼒産業を取り巻く経営環境は厳しさを増しつつあります。
こうした背景のなか、電力産業が抱える課題の解決や競争力強化のために、ビッグデータやIoT、AIなどの新しいデジタル技術を取り入れたDXは必要不可欠です。
IoTやAIを活用するデジタル発電所は、電力産業が抱える様々な課題の解決手段として期待されています。
デジタル発電所への移行で期待される効果
デジタル発電所は、日本の電力産業が抱える課題の解決手段として期待されていますが、具体的にどのような効果があるのか気になるところです。以下では、デジタル発電所への移行によって期待される効果を紹介します。
- 発電所を運営する人数の最適化
- 発電・運用コストの削減
- 見える化による技術の継承
発電所を運営する人数の最適化
デジタル発電所の運用によって、人数の最適化が可能です。
例えば、従来ではオペレーションや性能管理などの様々な業務を従業員が行っていましたが、デジタル発電所を導入すればAIによるデータ管理が可能になります。
AIの提案を受けてから従業員が最終的な判断を下すことで、「従来の監視とトラブルへの対応」から「データに基づいた合理的な予知・予防」への転換が可能です。
このように、デジタル発電所の導入によって業務効率が向上し、最適な人数での運用や、現場の従業員が新たな価値の創造に注力できるようになることが期待されています。
近年は人口減少によって働き手が不足しており、今後も労働人口は減少すると予測されています。デジタル発電所による効率的な運用ができれば、将来的な人手不足の解消にも繋がるでしょう。
発電・運用コストの削減
デジタル発電所の導入によって、メンテナンスコストや発電・運用コストの削減が可能になります。
例えば、過去に培った膨大な運転データをAIに学習させれば、石炭火力の燃焼最適化に必要な設定パラメータを算出し、CO2(二酸化炭素)の削減やコストの最適化が可能です。その結果、低価格での電力供給が実現できるかもしれません。
また、近年は海外情勢によって資源価格が高騰し、様々な業界が影響を受けていますが、デジタル発電所の普及によって低価格での電力供給が可能になれば、国内産業全体のコストダウンも期待できます。
見える化による技術の継承
発電所のO&M(運用・保守)には、様々な業務があります。
- 性能管理
- 予兆管理
- 不具合管理
- 作業停止管理
- 予寿命管理
- 保全計画
発電所のO&Mは、業務ごとに専門的な知識やノウハウが必要ですが、知識や技術などのノウハウは現場の従業員に属人化されている傾向が強いです。
しかし、IoTやAI技術によって見える化できれば、属人化していたノウハウを誰でも共有できます。
知識や技術などのノウハウを継承する手間が最小限に抑えられるため、培ってきたノウハウが失われることなく、次世代に引き継げるでしょう。
また、見える化によって発電所同士が繋がることもできるため、各発電所が培ってきたO&Mに関する知識やデータを相互利用し、課題の発見や解決策の共有なども可能で、企業全体のレベルアップにもつながります。
デジタル発電所から見える電力事業に必要な技術
すでにデジタル発電所の取り組みが実施されているなか、日本の電力事業では新技術の導入が必要不可欠です。以下では、デジタル発電所を例に、今後の電力事業に必要な技術を紹介します。
- IoT技術の活用
- AIを活用したデータ分析
- デジタル化に対応した運用システムの構築
IoT技術の活用
デジタル発電所では、機器の動作状況や熱効率、災害・事故件数などの様々な情報を取得し、管理するためのIoT技術が欠かせません。
常に発電を続けているデジタル発電所では、24時間リアルタイムでの監視が必要です。IoT技術の活用によって、取得したデータから機器の異常の検知や、補助動力の管理などが可能になります。
今後の電力事業では、適正な人数での運用が求められるため、デジタル発電所と同様にIoTを活用したデータの取得や管理は必要不可欠になるでしょう。
AIを活用したデータ分析
デジタル発電所では、IoT技術の活用によって膨大なデータの取得が可能ですが、それを人の手で確認するのは不可能です。また、取得したデータから最適な数値やルーティン化がデジタル発電所には欠かせません。
こうしたデータの分析や最適化は、AIが最も得意とする分野です。そのため、AIとIoTは、セットで導入が必要な技術と考えましょう。
デジタル化に対応した運用システムの構築
デジタル発電所では、蓄積されたデータの見える化が重要です。データによる予兆監視、作業停止調整、パフォーマンスの確認・実施判断など、最終的な確認や管理、判断は人が行います。
IoTやAIを活用して膨大なデータを取得しても、データの分析結果が確認できなければ運用できません。そのため、データを可視化できるよう、デジタル化に対応した運用システムの構築が必要です。
ただし、システムの構築・運用には時間と費用がかかります。特に電力事業はニーズが限定されるため、自社に最適なシステムの導入を検討する必要があるでしょう。
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電力分野でのDXは必要不可欠な時代になっています。また、日本が掲げる2050年までのカーボンニュートラル実現に向けては、火力発電の脱炭素化技術がカギを握っています。
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デジタル発電所でも活用されるIoTやAIを導入してビジネスの発展を
電力システムの改革が進むなか、電力産業が抱える様々な悩みを解決する手段としてデジタル発電所が注目されています。すでにデジタル発電所は導入が開始されており、一定の成果が出ている状況です。
デジタル発電所にも活用されているIoTやAIなどの最新技術を取り入れて、ビジネスを発展させましょう。
なお、最新情報を学ぶためには、様々な技術が結集する展示会への参加がおすすめです。火力発電に関連する最新技術や業界の動向を知りたい方は、ぜひZERO-E THERMAL EXPOゼロエミッション火力発電EXPOにご参加ください。
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▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
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プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、サーマルリサイクル技術に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他