二次電池とは?種類・特徴・用途や一次電池との違い、
メリットを解説

二次電池とは?種類・特徴・用途や一次電池との違い、メリットを解説

充電して繰り返し使えるなど、多数のメリットがある「二次電池」は、電気自動車やスマートフォン、電子機器から船舶、航空機並びに工場まで幅広い分野に利用されています。現在はカーボンニュートラルの実現や再生可能エネルギーの普及に向けて、二次電池の開発が盛んに行われているところです。

一口に二次電池といっても多種多様な種類があり、それぞれ特徴が異なります。そのため、製品へ導入する際は、用途にあう適切な二次電池を選ぶことが大切です。

本記事では、二次電池の仕組みや一次電池との違いから、二次電池の種類と特徴、用途の具体例やメリット・デメリットまで解説します。また、二次電池の情報を効率的に集める方法も紹介するので、二次電池の基礎知識や用途を理解した上で導入をご検討ください。
 

二次電池とは?一次電池との違いを解説

電池の種類を大別すると、化学電池・物理電池・生物電池の3つがあります。電池内部の物質の化学反応により発電する二次電池は、化学電池の一種です。

一次電池と二次電池の大きな違いは、繰り返し使えるかどうかです。

「一次電池」とは、アルカリ乾電池をはじめとした使い切りの電池のことをさします。一次電池も化学電池の一種ですが、二次電池と違って充電機能を持ちません。その代わり、一次電池は二次電池よりも価格が安く、入手しやすいため、日常生活の様々な場面でよく使われています。

一方、充電して繰り返し使える電池を「二次電池」といいます。充電池や蓄電池のほうが耳馴染みは良いかもしれません。二次電池の用途は幅広く、スマートフォンや電気自動車などの身近なものから、航空機や列車などの輸送車両、工場や商業施設の電源まで、様々な業界で取り入れられています。

カーボンニュートラルの実現を目指すうえで、再生可能エネルギー由来の電気を安定して供給するためには、二次電池が欠かせません。
より高性能な二次電池の実用化・量産化には、コストや安全性などの課題をクリアする必要があります。二次電池のメリット・デメリットについては後述します。
なお、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みについては以下の記事で紹介しているため、ぜひあわせてご覧ください。

▶関連記事:カーボンニュートラルに向けた取り組みとは?国際的な背景と企業の導入事例を紹介

 

二次電池の仕組みと寿命

二次電池の発電の仕組みには、内部の充填物質が起こす化学反応が関係しています。 まずは、放電に関してメカニズムを説明しましょう。

電池内の2つの電極のうち、負極では酸素と結合することなどによる酸化反応によって電子が放出され、正極では電子を吸収することによって還元反応が起こります。負極で発生した余剰電子が、正極で起こる還元反応によって不足する電子を補うように移動することが放電です。

それぞれの極で発生する酸化還元反応は、電極の材質や電解液によって異なりますが、これらは化学反応を起こすことができなくなるまで、電気を発生させ続けることができます。

充電時に起こる化学反応は、放電時とは逆です。二次電池内部に電気が送られると、正極で酸化反応が、負極で還元反応が起こります。放電時と逆の化学反応を起こすことで放電前の状態に戻り、電池を再使用できる仕組みです。

また、二次電池の寿命は、想定サイクル数によってあらわされます。充電から放電までの流れを1セットで「1サイクル」と数え、想定サイクル数が多いほど長寿命です。

二次電池の想定サイクル数は、電池の使い方や環境、二次電池の種類によって異なりますが、主要な二次電池の想定サイクルは資源エネルギー庁が発表している資料によると、主要二次電池のサイクル回数は2,000~4,500回程度とされています。

二次電池の種類と特徴

二次電池には様々な種類があり、それぞれ特徴が異なるため、用途にあわせて適切なものを選ぶ必要があります。主な二次電池の種類と特徴は、以下のとおりです。

鉛蓄電池
電極に鉛を使用した鉛蓄電池は、世界ではじめて開発された二次電池で、古くから使われ続けています。鉛蓄電池の特徴は、材料が安価で、短時間・長時間、大量・少量の放電に柔軟に対応できる点です。

鉛蓄電池は性能が安定しているため、自動車や非常用のバックアップ電源などの用途に使われます。

ニッケルカドミウム電池
ニッケルカドミウム電池は、電極にニッケルとカドミウムを使用した二次電池です。鉛蓄電池の次に歴史が古い電池ですが、カドミウムが有害なため、1990年に商品化されたニッケル水素電池への置き換えが進められました。

また、ニッケルカドミウム電池は大量の電気を充放電できる一方、消費電力が小さいため、電動工具、非常用電源などの用途に活用されていました。

ニッケル水素電池
ニッケル水素電池は、電極にニッケルと水素吸蔵合金を使用した二次電池です。有害物質のカドミウムを用いていないため、安全性のメリットからニッケルカドミウム電池に代わって普及が進みました。

ニッケル水素電池の特徴は、急速充電が可能でエネルギー密度も高い点です。自然放電があるため、寿命は6年前後で、乾電池型二次電池、ハイブリッドカー、鉄道システムの地上蓄電設備などの用途に活用されています。

リチウムイオン電池
リチウムイオン電池は、正極と負極の間をリチウムイオンが移動して充放電する仕組みの二次電池です。 エネルギー密度が高く、急速充電が可能で、長寿命の特徴があります。

性能が高くメリットが多いため幅広い分野に普及しており、スマートフォンやパソコン、ゲーム機、電気自動車、定置用蓄電池などの用途に活用されています。

ただし、リチウムイオン電池は強い衝撃により発火する可能性があるため、安全性を確保するには取り扱いに注意が必要です。

なお、リチウムイオン電池は、正極に用いるリチウム含有金属酸化物によって種類が分かれます。 リチウムイオン電池の種類についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:リチウムイオン電池の種類は?材料・形状の特徴と安全性・用途を解説

NAS電池(ナトリウム硫黄電池)

NAS電池(ナトリウム硫黄電池)は、負極にナトリウム(Na)、正極に硫黄(S)を使用した二次電池で、日本ガイシ株式会社が世界初の実用化に成功しました。NAS電池は大容量、高エネルギー密度、長寿命が特徴です。

鉛蓄電池の約3分の1のコンパクトサイズで、長期の安定電力供給が可能なため、非常用電源、再生可能エネルギー設備、電力貯蔵施設、変電所などで導入されています。

ナトリウムイオン電池
価格が高く、安定供給が難しいリチウムイオン電池の課題解決のため、現在はレアメタルフリーの電池開発が進められています。そのうちのひとつがナトリウムイオン電池です。

ナトリウムイオン電池は、正極と負極の間をナトリウムイオンが移動して充放電する仕組みの二次電池です。まだ研究段階ですが、実用化されればスマートグリッド用大型電池や電気自動車用電源などの用途に活用できると期待されています。

中国では、ナトリウムイオン電池を採用した電気自動車の実用化が始まりつつあります。

全固体電池
全固体電池は、電解質を含む全ての材料が固体で構成された二次電池です。固体の電解質を用いることで、多様な形状や構造を実現できる、電池の寿命が長くなる、様々な環境で利用できるなどのメリットが得られます。

リチウムイオン電池を超える性能が期待され、主に自動車メーカーや電機メーカーが全固体電池の開発を進めているところです。

まだ量産技術が確立されておらず、本格的な普及にまでは至っていません が、今後の全固体電池実用化を見越して情報を集めておくとよいでしょう。全固体電池についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:全固体電池の種類やメリットと課題、利用用途を解説!実用化はいつ?

二次電池のメリット・デメリット

二次電池には多くのメリットがあると同時にデメリットもあります。

二次電池は充電して繰り返し使えるためコスト削減に繋がり、環境にもやさしい 点がメリットです。再生可能エネルギー設備との相性も良く、太陽光や風力で発電した電気を二次電池に蓄えておけば、必要な時に電気を活用できます。

また、二次電池を予備電源として使えば、停電しても電気を使えるため災害時も安心です。

ただし、二次電池は一次電池よりも高価なため、導入コストは高くなります。 さらに、二次電池を導入する場合は、使用環境や取り扱いにも気を配らなくてはなりません。温度変化にも弱く、なかには高温で発火する危険性があるものや、過充電や過放電で発熱する恐れがあるものもあります。

加えて、定期的に充電し、電池の種類ごとに使い方やサイクル数、寿命が異なることを考慮しつつ利用しなければなりません。

二次電池の用途の具体例

二次電池は、様々な用途に幅広く活用できます。以下は、二次電池の用途の具体例です。

近年は、カーボンニュートラルの潮流から、ますます二次電池の重要性が増しています。車やモビリティの電動化に力を発揮するだけでなく、再生可能エネルギー導入に伴う調整力としても、二次電池の市場規模はさらに広がっていくでしょう。
 

二次電池の知識を深めるなら「BATTERY JAPAN 二次電池展」へ

二次電池の情報がほしい方や導入検討中の方は、「BATTERY JAPAN(バッテリージャパン) 二次電池展」へご参加ください。

BATTERY JAPAN 二次電池展とは、二次電池の研究開発や製造に必要な技術・部品および材料・装置が集まる、電池分野世界最大級の展示会です。2050年カーボンニュートラル実現に向けたバッテリー技術の情報収集が可能であり、世界各国から専門家が来場します。

出展対象の製品は、例えば以下のように多種多様です。

  • 部品・材料:正極材、負極材、電解液、固体電解質など
  • 材料開発支援:マテリアルズ・インフォマティクス、データ解析サービスなど
  • バッテリーマネジメントシステム:バッテリーマネジメントIC、変圧器・遮断機など
  • 二次電池・キャパシタ:リチウムイオン二次電池、全固体リチウム電池、ニッケル水素電池など

二次電池の導入を検討している二次電池メーカーの方が来場すれば、二次電池の専門家が集まる場で、あらゆる情報を収集可能です。会場では具体的な商談も行われるため、技術提案を受けたり、装置の設計を相談したりできる可能性もあります。

また、BATTERY JAPAN 二次電池展では、展示会への出展も受け付けています。二次電池の製造・販売に関わるメーカーや商社の方は、当展示会への出展をぜひご検討ください。

二次電池メーカーや次世代自動車メーカーの他、電池材料メーカーや大学・国公立研究所など、二次電池に関わる方々が多数来場するため、自社製品を広くアピールする絶好の場となります。個別の商談を行った場合には、業務提携や見積にも繋がるかもしれません。

来場者の方、出展社の方ともにメリットのある展示会のため、ぜひ参加をご検討ください。

「BATTERY JAPAN 二次電池展」来場・出展案内はこちら

 

二次電池のメリットを得るためには用途に応じた種類の導入が大切

使い捨ての一次電池に対し、二次電池は充電して繰り返し使える点がメリットです。太陽光や風力で発電した電気を蓄えたり、災害時に強い予備用電源として使ったり、二次電池のメリットを活かした使い方は豊富にあります。

二次電池は、電子機器や輸送車両、産業用電源、防災設備などの幅広い用途に利用可能です。

ただし、種類によって特徴が異なるため、用途に応じて適切な二次電池を選ぶ必要があります。また、使い方によっては発熱・発火のおそれがあるので、安全性に配慮しながら活用することも重要です。

二次電池の導入には、種類ごとの特徴や安全のための注意点の理解が求められます。二次電池の情報を効率的に集めたい方は、ぜひBATTERY JAPAN 二次電池展にご参加ください。

「BATTERY JAPAN 二次電池展」詳細はこちら
※「BATTERY JAPAN 二次電池展」は、「スマートエネルギーWeek(SMART ENERGY WEEK)」の構成展です。

▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、サーマルリサイクル技術に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他