2023年に施行された改正省エネ法の変更点とは?
企業に求められる対応などを解説

2023年に施行された改正省エネ法の変更点とは?企業に求められる対応などを解説

エネルギー使用の合理化を求める「省エネ法」が、2023年に改正されました。そもそも省エネ法はどのような法律なのか、改正により何が変わったのか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、改正省エネ法の概要や、従来の省エネ法からの変更点を紹介します。また、改正省エネ法を受けて企業が取り組むべきことも説明します。改正省エネ法により求められる内容を理解し、省エネに対応するための具体的な行動に役立てましょう。


▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、サーマルリサイクル技術に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他


目次

  • そもそも「省エネ法」とはどんな法律?
  • 2023年4月に施行された「改正省エネ法」とは
  • 改正省エネ法で変更された3つのポイント
  • 事業者クラス分け評価制度による対応
  • 改正省エネ法を踏まえて企業がすべきこと
  • 改正省エネ法に基づく対策には「脱炭素経営 EXPO」への参加がおすすめ
  • 改正省エネ法を踏まえて非化石エネルギーの有効活用を

【出展社・来場者募集中!】
改正省エネ法に必要な情報が集まる【脱炭素経営 EXPO】

そもそも「省エネ法」とはどんな法律?

省エネ法(正式名称:エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)は、エネルギー消費が多い事業者に対し、効率的なエネルギー使用を求めるために制定された法律です。

経済産業省資源エネルギー庁の「省エネポータルサイト」によれば、「一定規模以上の(原油換算で1,500kl/年以上のエネルギーを使用する)事業者に、エネルギーの使用状況等について定期的に報告いただき、省エネや非化石転換等に関する取組の見直しや計画の策定等を行っていただく法律※」と解説されています。

1970年代に起きたオイルショック(石油危機)をきっかけに、化石燃料(石油、石炭、天然ガス)の効率的な使用を促すことで、石油の供給が止まるのを避けるため、省エネ法が制定されました。

省エネ法は、1979年の制定以来、経済成長やビジネスモデルの変化などにともない改正を繰り返しています。その時代の状況にあわせて、省エネ対策の強化や対象者の拡大、新たな制度の導入、目的の追加など、改正の内容は多様です。

過去の改正では、東日本大震災後の電力需給逼迫がきっかけとなったケースもありました。

※出典:経済産業省 資源エネルギー庁「事業者向け省エネ関連情報 省エネ法の概要」

省エネ法で規制される対象事業者

省エネ法の対象事業者には、直接規制または間接規制が行われます。どちらの規制が行われるかは、事業者の分野によって決まります。

直接規制が行われるのは、工場・事業場および運輸分野です。工場の設置者などは、一般的には努力義務の対象者として規制されますが、一部は報告義務の対象者となります※。

報告義務の対象者に該当するのは、エネルギー使用量1,500kl/年以上の特定事業者、年間輸送量3,000万トンキロ以上の特定荷主などです。年間の消費エネルギー量や輸送量、保有トラック台数が一定量以上となると、報告義務が課されます。

間接規制が行われるのは、生産量などが一定以上の製造事業者、家電やエネルギーを取り扱う小売事業者です。製造事業者には、自動車や家電など32品目に関し、エネルギー消費効率の目標達成を求めています。小売事業者は、消費者に対する情報提供が努力義務として求められます。

※出典:経済産業省 資源エネルギー庁「今後の省エネ法について」

 

2023年4月に施行された「改正省エネ法」とは

改正省エネ法が施行されたのは、2023年(令和5年)4月です。2022年3月に改正法律案が閣議決定され、5月に国会で成立しました。

改正された背景には、2050年までに実現を目指すカーボンニュートラル目標があります。2020年10月、菅元総理大臣は「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」目標を世界に宣言しました。

さらに、2021年4月には、2030年度の温室効果ガスを46%削減(2013年度比)することも表明しています。

こうした目標達成のためには、徹底した省エネを続けることが重要です。政府をはじめ企業や個人まで、各層が協力して目標達成に取り組まなければなりません。具体的な取り組みとしては、再生可能エネルギーの導入・拡大による脱炭素化などが挙げられます。

カーボンニュートラルについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:カーボンニュートラルに向けた取り組みとは?国際的な背景と企業の導入事例を紹介

 

改正省エネ法で変更された3つのポイント

改正省エネ法では、従来の省エネ法から変更された点が3つあります。

  • エネルギー定義の拡大
  • 非化石エネルギー転換
  • 電気需要が平準化から最適化へ

これらの変更点をそれぞれ解説します。

エネルギー定義の拡大

改正省エネ法では「エネルギー」の枠組みが拡大し、非化石エネルギーも定義の対象となりました。

従来の省エネ法でエネルギーと定義されていたのは、化石燃料(石油、石炭、天然ガスなど)のみです。改正省エネ法では、太陽光や水素などの非化石エネルギーも定義に含まれるようになったため、報告対象に該当します。

非化石エネルギーの例※として挙げられるのは、以下のとおりです。

  • 黒液
  • 木材
  • 廃タイヤ
  • 廃プラスチック
  • 水素
  • アンモニア
  • 太陽熱
  • 太陽光発電電気 など

改正により、これらの非化石エネルギーに関しても使用の合理化が求められるようになりました。

※出典:経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ法が変わります」

非化石エネルギー転換

一定規模以上の特定事業者には、以前よりエネルギー使用状況の報告義務がありましたが、改正後はこれに加えて、非化石エネルギー転換に関する中長期計画の策定も義務となりました。

これにより、非化石エネルギーの導入拡大、使用割合の向上が求められるようになったことを意味します。

また、以下の特定5業種に関しては、国が定量目標の目安を設定しています※。

  • 鉄鋼業(高炉・電炉)
  • 化学工業(石油化学・ソーダ工業)
  • セメント製造業
  • 製紙業(洋紙製造業・板紙製造業)
  • 自動車製造業

これらの業種に該当する場合は、定量目標の目安を参考にして事業者ごとの目標を定め、取り組み状況の報告を行わなければなりません。

なお、太陽光発電やオフサイトPPAなど、新たな再生可能エネルギー設備の増加を促す「重み付け非化石」に該当する場合は、特別な評価が行われます。この場合、電気の使用量を係数1.2倍にして計算することが可能です。

太陽光発電やPPAについて詳しく知りたい方は、以下の記事をあわせてご覧ください。

▶関連記事:太陽光発電のPPAとは?仕組み・メリットや再エネ導入時の「追加性」について解説!

※出典:経済産業省 資源エネルギー庁「省エネ法が変わります」

電気需要が平準化から最適化へ

大規模なエネルギーを使用する特定事業者に電気需要の最適化が求められるようになったのも、改正省エネ法の変更点です。

従来は最適化ではなく平準化で、季節・時間帯による電力需要の格差を少なくする努力が求められていました。改正後に求められる最適化とは、発電の多い時間帯に電気を使用し、少ない時間帯には控える行動をさします。

そして、電気需要の最適化を促すために「ディマンド・リスポンス(DR)」が取り入れられるようになりました。DRとは、電力供給側の変動に応じて、電力の使用者が電気需要パターンを変化させることをいいます。需要側が供給量によって消費量を調整し、需給バランスが整う仕組みです。

また、DRには、上げDRと下げDRの2つのタイプがあります.。

  • 上げDR:電力需要に対して供給が過剰の場合、電気需要を増加させること
  • 下げDR:電力需要に対して供給が不足する場合、電力使用量を抑制すること

改正省エネ法ではDRに関する報告も求められ、評価の対象となります。DRを実施した日数と、月別または時間帯別の電気使用量を報告しなければなりません。

 

事業者クラス分け評価制度による対応

省エネ法には「事業者クラス分け評価制度(SABC評価制度)」が設けられています。これは定期報告書などの内容から、事業者を4つのクラスに分けて評価する制度です。

※出典:経済産業省 資源エネルギー庁「事業者向け省エネ関連情報」

Sクラスの事業者に分類されると、経済産業省のホームページで企業名や連続達成年数が公表されます。省エネに積極的であると示すことができるため、企業のイメージアップにつながるでしょう。

一方、Bクラスの事業者には注意喚起文書の送付など、立入検査や現地調査が行われることがあります。評価が不十分だった場合はCクラスとなり、省エネ法第6条に基づいた指導が行われます。

 

改正省エネ法を踏まえて企業がすべきこと

特定事業者等に該当する企業は、改正省エネ法に基づいた対応を行う必要があります。非化石エネルギーへの転換や電気需要の最適化に対応するため、具体的に何をすれば良いのか見ていきましょう。
 

中長期的な目標の設定と更新の検討

特定事業者は「使用電気全体に占める非化石電気の比率の2030年度目標」を設定します。まずは、中長期計画書にて現時点の非化石割合を上回る目標値を設定し、次年度は現状を踏まえて目標をより高められるよう、検討が必要です。

中長期計画書や定期報告書を作成しない、あるいは提出しない場合には、50万円以下の罰金が科されるため注意しなければなりません。

節電などエネルギー消費量の見直し

企業でエネルギーを無駄に消費していないか、具体的な確認を行うことも重要です。導入している機器・設備の使用状況を見直し、合理的にエネルギーを使用するよう改善を図りましょう。

エネルギー消費量の見直しには、節電などの省エネの具体的な取り組みも有効です。

工場の生産設備の事例でよく報告されるのがコンプレッサーの事例です。具体的には、コンプレッサーのエアー漏れを減らしたり、空気圧調整による最適化をしたり、さらに効率的なコンプレッサーへ変更するなどにより、省エネ効果が大きいといわれています。

空調設備では、エアコンを使用する際は季節に応じて設定温度を適正に保ち、定期的にフィルターを掃除します。工場などの製造現場では、ビニールカーテンや断熱塗装の活用も、保冷効果・保温効果を得るために役立ちます。

また、照明設備では、照明をLEDに変更する、こまめに電気を消す、使わない家電は電源を落とす、照明を間引くなどの対応も、節電には効果的です。

太陽光発電や省エネ設備の導入

改正省エネ法では、非化石電源の導入・拡大が高く評価されるようになりました。なかでも太陽光発電の導入は、非化石エネルギーの導入量を増やす代表的な方法です。太陽光発電を導入すると非化石エネルギーの割合が増え、電気代削減にも繋がります。

太陽光発電で使用する設備は、主に以下3つの方法で導入できます。

  • 自己所有自家消費型
  • リース
  • PPAモデル

各方法の詳細は以下の記事で解説しているので、ぜひこちらもご覧ください。

▶関連記事:太陽光発電のPPAとは?仕組み・メリットや再エネ導入時の「追加性」について解説!

なお、自社の敷地面積が狭いなどの理由で太陽光発電設備を設置できないケースでも、導入可能な仕組みがあります。それは、自社の敷地外に設備を設置する「オフサイトPPA」と呼ばれる方法です。

オフサイトPPAはその仕組みから「第三者所有モデル」とも呼ばれており、導入やメンテナンスの費用はPPA事業者が負担するため、多額の初期費用を用意する必要がありません。敷地の広さや建物の強度に問題があっても、太陽光発電設備を導入できる画期的な仕組みとして注目されています。

デマンドコントロールシステムや蓄電池の導入

デマンドコントロールシステムと蓄電池の導入は、電力の需給バランスを整えるために役立ちます。

デマンドコントロールシステムとは、需要の最大値を抑えるために使用電力を調整するシステムです。電力の使用量を監視し、自動で消費電力の調整を行い消費電力量コントロールします。

蓄電池は、電気を貯める機能を有しており、充電して繰り返し使える電池です。蓄電池を活用して電気を貯めることで、電気の有効活用が促されます。太陽光発電と併用すれば、供給量の多い昼間に蓄えた電気を夜間に使えるため、より効率的です。

J-クレジットや非化石証書での取引

J-クレジットや非化石証書などの第三者認証を活用するのも手段のひとつです。

J-クレジットは、企業による環境への取り組みをクレジットとして認証し、取引できる仕組みとして活用されています。認証される主な内容は、省エネ設備の導入、太陽光発電など再生可能エネルギーの導入、適切な森林管理によるCO2(二酸化炭素)吸収量です。

非化石証書は、2018年5月からはじまった制度です。再生可能エネルギーや原子力発電など、非化石電源で発電した電気の環境価値を証書にして取引を行います。

こうしたクレジットを活用すると、脱炭素化への投資がより促進されると期待できるでしょう。さらに、クレジットの売却益を設備投資にあてたり、CO2削減に意欲的に取り組む企業としてアピールできたりするメリットも得られます。

 

改正省エネ法に基づく対策には「脱炭素経営 EXPO」への参加がおすすめ

昨今の世界的な脱炭素化が進む潮流から、改正省エネ法に基づく取り組みは国家規模だけでなく、各企業でも意識する必要があります。時代にあわせて改正を繰り返す省エネ法の基本を踏まえ、具体的な取り組みを進めることが望ましいでしょう。

企業として省エネ促進の行動を具体化するなら、「脱炭素経営 EXPO」にぜひご参加ください。脱炭素経営 EXPOは、日本最大の脱炭素経営の専門展です。ゼロカーボンコンサル、PPA・再エネ電力、エネマネ・省エネ設備など、企業様向けのあらゆる脱炭素ソリューションが出展します。

ご来場の対象となる業種は、脱炭素経営を目指す企業様の経営層や経営企画、カーボンニュートラル推進部門などです。当展示会では、改正省エネ法でも合理化・導入が求められている、非化石エネルギーに関する情報が得られます。

また、太陽光発電・風力発電をはじめとする再生可能エネルギー関連サービスの出展や、省エネ促進に役立つ設備の紹介が行われた実績もあるため、導入検討時の参考になるでしょう。

なお、当展示会では、出展者様も募集しております。ご来場対象となる事業者様は、脱炭素経営を目指す企業様を中心としているため、会場では技術提案や導入相談など、具体的なご商談にお役立ていただけます。

このとおり脱炭素経営 EXPOは、来場者側・出展者側のいずれにもメリットの多い展示会です。ぜひ参加をご検討ください。

■脱炭素経営 EXPO
詳細はこちら

 

改正省エネ法を踏まえて非化石エネルギーの有効活用を

改正省エネ法の制定により、再生可能エネルギーを含む非化石エネルギーの導入だけでなく、効率化が求められるようになりました。カーボンニュートラル目標達成のため、今後も太陽光発電の導入拡大や有効活用が見込まれます。

特定事業者に該当する企業は、法に基づき非化石エネルギーの導入や需要最適化に取り組むことが重要です。取り組みを具体化すれば、省エネへの貢献だけでなく企業のイメージアップにも繋がるでしょう。

改正省エネ法に合わせたアクションを起こすには、脱炭素経営 EXPOでの情報収集がおすすめです。非化石エネルギーの導入検討や企業との商談にもお役立てください。

さらに詳しい情報を知りたい方へ
資料請求はこちら

※「脱炭素経営EXPO」は、「GX 経営WEEK」の構成展です。

【出展社・来場者募集中!】
改正省エネ法に必要な情報が集まる【脱炭素経営 EXPO】

▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、サーマルリサイクル技術に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他


■関連する記事