ゼロエミッション火力発電とは?日本が取り組む脱炭素化への動向と課題を紹介

世界では、温暖化防止のため、共通目標として2050年までに脱炭素化を目指しています。なかでも日本では、電力供給の約7割を占めている火力発電にフォーカスし、ゼロエミッション火力を宣言しました。

脱炭素化に向けて注目されるゼロエミッション火力ですが、具体的に火力発電でどのように脱炭素化を目指すのか、実現可能なのか疑問に感じている方もいるのではないでしょうか。

本記事ではゼロエミッション火力の概要を解説し、実現に向けた技術や動向・課題を紹介します。


▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、サーマルリサイクル技術に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他


目次

  • ゼロエミッション火力とは脱炭素化を目指す火力発電
  • 日本がゼロエミッション火力を推進する背景
  • ゼロエミッション火力の実現に向けた技術
  • ゼロエミッション火力実現への課題
  • ゼロエミッション火力の取り組み事例|株式会社JERA
  • 火力発電を有効活用するなら「ZERO-E THERMAL EXPOゼロエミッション火力発電EXPO」へ
  • ゼロエミッション火力の最新情報を入手してサステナブルなビジネスを

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ゼロエミッション火力とは脱炭素化を目指す火力発電

ゼロエミッション火力とは、従来の燃料である石炭や天然ガスなどではなく、水素やアンモニアを活用する火力発電です。

火力発電は、燃料を燃やして水を沸騰させた際に発生する蒸気の力でタービンを回し、発電機を動かして電気を作る発電方法ですが、従来の燃料は燃焼時にCO2(二酸化炭素)を排出します。

しかし、CO2は地球の温暖化に影響を与えるため、従来の燃料は温暖化抑止の観点から好ましくありません。

そこで、燃焼時にCO2を排出しない、「究極のクリーンエネルギー」と呼ばれる水素(アンモニアも水素エネルギーのひとつ)を活用した火力発電が、ゼロエミッション火力発電です。

ゼロエミッション火力と再生可能エネルギーの組み合わせで低炭素化・電力の安定供給を

温暖化抑止の意味では、温室効果ガスが発生しない太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを活用した発電が最も効果的といえます。

しかし、太陽光発電や風力発電は、季節・天候などの自然要因によって供給量が左右されるため、再生可能エネルギーだけの発電では電力の安定供給が難しいです。

一方、火力発電は燃料さえあれば安定した電力の供給が行えるだけでなく、出力の調整も可能です。そのため、再生可能エネルギーとゼロエミッション火力の相互補完によって、低炭素化かつ安定した電力の供給が可能になります。

日本がゼロエミッション火力を推進する背景

世界では、共通の目標として2050年までに脱炭素化の実現を目指しています。日本も例外ではなく、岸田首相は2021年11月の外遊で「ゼロエミッション(排出ゼロ)火力発電」の普及を目指すと宣言しました。

日本がゼロエミッション火力発電の普及を目指す理由として、現状、日本の電力供給で火力発電の割合が高いことがあげられます。資源エネルギー庁が公表する「日本のエネルギー2022年度版」によると、日本の発電電力量の比率※は以下のとおりです。

※出典:経済産業省 資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2022年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」」

上記のとおり、化石燃料を活用した火力発電の割合は日本の発電電力の約7割を占めており、再生可能エネルギーは2割程度しかありません。

化石燃料を使用した火力発電は、温暖化の原因であるCO2が発生するため抑制するべきですが、すぐに全てのエネルギーを再生可能エネルギーに代替するのは電力の供給面で難しく、安定的なエネルギー供給には火力発電が必要です。

こうした背景のなか、近年では電力の安定供給を維持しながら、脱炭素化の実現を進めるために、ゼロエミッション火力の研究が進められています。

ゼロエミッション火力の実現に向けた技術

国際展示会「POWERGEN International 2022」では、日本がゼロエミッション火力の実現に向けた技術を紹介しました。日本が紹介した主なゼロエミッション化の技術は、以下のとおりです。

  • 水素エネルギーの利用
  • 燃料アンモニアの利用
  • CCU ・CCUS の活用

各項目の内容を紹介します。

水素エネルギーの利用

水素は、天然ガス火力発電で採用されているガスタービン発電と相性が良く、活用が期待されています。水素エネルギーのメリットは以下のとおりです。

  • 使用時にCO2を排出しない
  • 様々な資源から製造可能
  • 貯蔵・輸送が可能

前述したように、水素は燃焼時にCO2を排出しないことに加え、資源が枯渇する可能性も低いです。また、気体・液体・固体での貯蔵や輸送も可能なため、災害時に輸送方法の選択ができるのもメリットです。

従来の燃料との混焼や水素のみを燃料にする専焼の発電機を開発できれば、発電時のCO2削減や排出ゼロも実現可能です。

水素エネルギーについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もご一読ください。

▶関連記事:水素エネルギーとは?メリット・デメリットと企業の活用事例から見る将来性を解説

燃料アンモニアの利用

アンモニアは水素エネルギーのひとつの形であり、石炭火力発電で採用されているボイラとの相性が良く、活用が期待されています。アンモニアのメリットは以下のとおりです。

  • CO2を排出しない
  • 水素の輸送媒体として役立つ
  • 水素同様に燃焼時にCO2を排出しない

アンモニアは水素分子を含んでおり、すでに輸送技術が確立しているため、大量輸送が難しい水素の輸送媒体になる点が、アンモニアを活用する大きなメリットです。

また、アンモニアを利用した火力発電の研究は水素より進んでおり、すでに石炭火力との混焼実験が進められています。

アンモニアについては以下の記事でも解説しています。ぜひご覧ください。

▶関連記事:アンモニア燃料とは?メリット・デメリットや研究開発が進む利用方法を解説

CCU ・CCUS の活用

CCU ・CCUSはカーボンニュートラルの実現に向けて注目されている技術です。

CCUは、地中や海底などにCO2を貯留して地上に放出されるCO2を抑える技術です。

ゼロエミッション火力への移行にはまだ時間がかかりますが、既存の火力発電で排出されるCO2を無視するわけにはいきません。そこで、CCUを活用すれば、CO2の削減が可能です。

これから活用が期待される水素や燃料アンモニアも、製造時にはCO2が排出されます。そのため、CCUはゼロエミッション火力に欠かせない技術です。

一方、CCUSは、CO2の貯留に加えてCO2を化学品や燃料、鉱物などに再利用する技術です。ゼロエミッション火力実現のカギとなる水素はコストがかかりますが、CCUSのさらなる発展と有効活用によって、水素にかかるコスト面の課題を解消できるかもしれません。

▶関連記事: CCS・CCUSとは?違いやCO2排出量削減に向けた国内外の取り組みを紹介

ゼロエミッション火力実現への課題

ゼロエミッション火力は、技術的に確立されるだけでは実現したとはいえません。発電技術以外にもゼロエミッション火力の実現にはいくつかの課題があります。

  • 高額なコスト
  • 燃料供給網の確保

各項目を紹介します。

高額なコスト

ゼロエミッション火力のカギとなる水素・アンモニアは、現時点での価格が高いです。

例えば、水素の販売価格は「100円程度/Nm3※」であり、既存燃料と比較すると最大で約12倍になっています。2030年には現状の3分の1以下である「30円/Nm3」を目指しているものの、それでも既存の燃料の価格が変わらなければ高コストです。

なお、アンモニアは、2030年に20%の混焼が実現した場合、石炭の15倍のコストになると推計されています。

※出典:経済産業省 資源エネルギー庁「水素・燃料電池戦略ロードマップの達成に向けた対応状況」

燃料供給網の確保

ゼロエミッション火力の実現に必要なアンモニアは、海外からの輸入を前提としています。

現行の石炭火力発電の20%をアンモニア混焼にした場合、年間50万トンのアンモニアが必要になるとされていますが、これは、現在国内で年間に消費される100万トンの2分の1に相当する量です。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁「我が国の燃料アンモニア導入・拡大に向けた取組について」

※1 国内の大手電力会社が保有する全石炭火力発電で、混焼/専焼を実施したケースで試算。
※2 日本の二酸化炭素排出量は年間約12億トン、うち電力部門は年間約4億トン。

アンモニアの需要が高まれば、調達のハードルが下がるだろうとの見立てはあるものの、ゼロエミッション火力の実現に向けては、新たな燃料供給網の構築が必要かもしれません。

ゼロエミッション火力の取り組み事例|株式会社JERA

株式会社JERA(ジェラ)は、国内26ヶ所の火力発電所を持ち、発電量の3割をカバーしている国内最大規模の火力発電事業者です。

株式会社JERAが目指すのは、従来の化石燃料を利用した火力発電から、燃焼時にCO2を排出しない水素・アンモニアへの切り替えによる電力の安定供給、そして2050年の脱炭素化です。

水素・アンモニアを活用したゼロエミッション火力のロードマップ※1は、以下のとおりです。

出典:株式会社JERA 公式サイト「JERA ゼロエミッション 2050」
※1 CO2フリーLNGの利用も考慮
※2グリーン/ブルーの水素アンモニア活用


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ZERO-E THERMAL EXPOゼロエミッション火力発電EXPOとは、発電システム、プラント設備から保守・運用技術、水素・アンモニア活用まであらゆる製品・技術が出展し、世界各国から専門家が来場する展示会です。

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ゼロエミッション火力は、従来の燃料である石炭や天然ガスなどではなく、水素やアンモニアを活用する火力発電です。ゼロエミッション火力の技術研究が進むことで、電力の安定供給と低炭素化が期待されています。

最新情報を学ぶためには、様々な技術が結集する展示会への参加がおすすめです。火力発電に関連する最新技術や業界の動向を知りたい方は、ぜひZERO-E THERMAL EXPOゼロエミッション火力発電EXPOにご参加ください。

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▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)
肩書:愛知工業大学 総合技術研究所 教授
プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。生産工程から排出する廃棄物や、使用済み車両のリサイクルなど幅広い分野で廃棄物の排出削減、有効利用技術の開発導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」他資源循環、サーマルリサイクル技術に関する表彰受賞。2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて資源問題、エネルギー問題に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 委員他


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